アカデミー監督賞受賞「ROMA/ローマ」はホントに映画? ボーダーレス化が進む映画ビジネス
アジア市場に向けたオリジナル作品も
一方、ネットフリックスはアジア市場をにらんだオリジナル作品制作にも力を入れ始めており、昨年11月にはシンガポールでアジア市場を対象としたカンファレンス「See What's Next: Asia」を開催した。さらに日本では今月12日にネットフリックスと日本のアニメ制作プロダクション数社が包括的業務提携契約を行うことを発表した。数社との契約はすでに執り行われており、第一弾として「攻殻機動隊SAC_2045」や「スプリガン」など人気アニメの制作・配信が行われる予定だ。
また、お隣りの韓国では、今年1月ネットフリックスオリジナルドラマ「キングダム」が大ヒットし注目を集めた。シンガポールでのカンファレンスで発表された際にも一番注目を集めていた作品だ。製作費200億ウォンをネットフリックスが全額投資しており、今年1月から世界190か国(27言語字幕、12言語吹替)で配信が始まった。
ドラマの舞台となるのは韓国お得意の朝鮮王朝時代という時代劇だが、中身はなんとゾンビ物でアクションシーンも盛り込まれている。映画のようなクォリティーの高さで話題を集めており、配信開始前からシーズン2の制作も決定し、現在撮影中だ。配信が始まった1月25日以来、韓国内のネットフリックスの利用者が65.6%もアップし、200万名が実際に利用を始めたという。「キングダム効果」と呼ばれるこの現象は、もともとターゲットだった20代の利用者を24万人増加させたばかりか、50代以上の利用者も13万人増やした。また、一番視聴時間が短かった50代以上の利用者の平均視聴時間も伸びたという。
韓国へのネットフリックス進出は2016年1月6日だった。韓国ではもともと地上波放送以外にケーブルテレビと契約している家庭が多く、ネットフリックスの月額契約もそれほど抵抗はなかったようだ。現在、韓国映画はネットフリックス独占配信版権映画が多く、ソン・ガンホ主演の「麻薬王(DRUG KING)」や、パクへイル/スエ主演の「上流階級」などがある。このように、各国が自国の強みを生かしたコンテンツを製作し、同時に国境を越えて全世界に配信できるシステムは映画の作り手にとって魅力的である。