渦巻く「中国すごい!」論──中国の自尊心はここまで肥大化している
「アメリカは中国に偉そうに上から物を言う資格はない。中国人はこの手は食わない」
先日の米中外交トップ会談で、中国外交のトップ楊潔篪(ヤン・チエチー)は、ブリンケン米国務長官の批判に強く反論。この発言は直ちに中国国内に広がった。「今の中国は昔のように貧しくない。中国人はもう誰の顔色も気にせず大声で『ノー!』と言える時代なんだ!」。楊の発言は中国SNSであふれるほどシェアされた。ネット通販サイト「淘宝(タオバオ)」も、赤地に白文字で楊の言葉をプリントしたスマホケースやTシャツを即座に売り始めた。
世界第2位の経済大国になり、中国人には金持ちの自覚が生まれた。アメリカのコロナ対策失敗を見て、「中国の特色ある社会主義」に自信も持つようになった。民主や自由は大したことない。カネも儲けられないし、コロナ退治もできない。欧米に偉そうなことを言われる筋合いはない──「もうこの手は食わない」という言葉の背景にはこんな心理がある。
それでは、中国人は何なら食うのか。これは中国ネット上で最も人気の外国人の振る舞いを見れば分かる。
浙江省杭州市在住のロシア青年「伏拉夫(フラフ)」は、TikTok中国版アプリの抖音(ドウイン)に「僕、中国人になりたい!」と短く投稿して300万超の「いいね!」を獲得した。「中国大好き!」「わが中国は本当にすごい!」「すごい! 中国!」の繰り返しでフラフは1000万人以上のフォロワーを集め、1億4000万以上の「いいね!」を得てネットの有名人になった。
「人はメンツが大事、木は皮が大事」という中国のことわざがある。メンツ重視は中国の伝統文化だ。中国人は褒め言葉が好きで、特に外国人の中国賛美はもっと好き。たとえ「褒め殺し」でも構わない。
いま中国ネット上にはフラフと同じ中国賛美の欧米人がたくさんいる。本音かどうかは別にして、中国人は彼らの褒め言葉を聞いて気分を良くし、メンツが保たれたように感じる。ただ、むやみな褒め言葉は、自国に対する客観的な判断を鈍らせる。自信を回復した中国人が食い尽くしているのは、この「禁断の果実」だ。
【ポイント】
我们中国太厉害了!
俺たちの中国はホントすごいぜ!
伏拉夫(フラフ)
ロシア名ウラジスラフ・ユリエビチ・ココレフスキー。1995年、ロシアのアムール州生まれ。2012年に高校卒業後、北京の大学に留学。さまざまな激辛火鍋に挑戦したり、高速鉄道化やキャッシュレス化が進む中国社会を称賛する投稿で人気だが、「金儲けの手段」との見方も。
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