米軍シリア撤退で具体化したトランプの公約「アメリカ・ファースト」
1つは、アメリカは他国や他の勢力のために犠牲を払いたくないという考え方です。つまり、クルドという「アメリカ以外」のためにカネや兵力という犠牲が発生していたのをストップするのは、アメリカの勝利になるのです。
2つ目は、アメリカがアメリカのことしか眼中にないのであれば、世界平和をどう実現するのかというと、それは大国の首脳との「ディール」で簡単にできるという「俺様ファースト」の考え方です。特にシリアにおける混沌とした状況については、「プーチンに任せる」というのが選挙公約でしたから、今回はそれがまさに実現した形です。
3つ目は、他国への介入をやめるという「非介入主義」、とりわけ「政権転覆(レジーム・チェンジ)」を狙った作戦をやめるという考え方です。究極の孤立主義から来る考え方ですが、アメリカは「シリアにおける政権交代を求めない」ということで、この「非介入主義」を具体化したのです。
ということで、2016年の選挙で公約した内容は、IS掃討も含めて「全部実現した」のだから、これは「アメリカの勝利」だというのがトランプ大統領の考え方であり、勝利宣言というのは負け惜しみでも何でもないのです。
では、こうした「アメリカ・ファースト」によって世界の各地は平和になるのかというと、決してそうではありません。強大なアメリカが、自由と民主主義の理念を掲げつつ、地域紛争の抑止に尽力してきたその努力をストップするのですから、平和にはならないのです。
その場合は、アメリカとして紛争当事国には兵器を売りつけようという魂胆も見え隠れします。「アメリカ・ファースト」だから自分たちは関与しない、けれども紛争があるのなら「アメリカ・ファースト」の考え方から武器の販売は大いにやりたい、つまり自分たちが火の粉をかぶらなければ、各地域が平和である必要もないし、戦争状態ならかえって軍事産業の需要が喚起される、これが「アメリカ・ファースト」の考え方の全体像なのです。
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