「AKB48」式アイドルが韓国アイドルより中国で人気の理由

2017年9月12日(火)16時46分

いかにファンと深い関係を築くかがアイドルビジネスのカギ

近年、中国でグループアイドルが注目を集めている理由について、先述の芸能コラムサイト「娯楽資本論」は育成と参加がカギだと分析している。日本においてAKB48がもたらした経済効果、すなわちアイドルを支持するファンの多額の出費をいとわない忠誠心が、中国のビジネス界でも注目されたのが最大の要因だ。

いかにファンと深い関係を築くか。中国では日本のグループアイドルのビジネスモデルを説明する用語として、「粉絲経済」(ファン経済)という言葉まで登場。ファンの獲得と課金形態において、これまでの「広く浅く」とは違う、「狭く深い」方式を摸索する実例として取り上げられている。

アイドルのスタイルにおいては、デビュー前にスキルを鍛え上げる韓国モデルと、未熟なままデビューして成長をファンに見せる日本モデルとがあるが、ファンがアイドルの成長を体験する後者のほうが深い関係が築かれ、実際に人気を博しているというわけだ。

なお、2016年1月には韓国でアイドル育成オーディション番組「PRODUCE101」が放送されており、韓国でも成長をファンに見せるスタイルがないわけではない。同年3月には「PRODUCE101」を手がけた韓国企業CJ E&Mの協力の下、中国の浙江衛星テレビがアイドルオーディション番組「蜜蜂少女隊」を放送。成長を見せるスタイルはもはや日本の専売特許ではないわけだが、中国ではあくまで日本式スタイルと認識されており、韓国が日本式を取り入れたとみなされている。

また、中国の若者がアイドル活動に従事できるようになったことについては、中国社会の変化も大きい。かつては「中学高校時代はひたすら勉強に励むべきであり、それ以外の活動は一切慎むべき」という価値観が支配的だった。ところが、暮らしが豊かになるにつれて若者が青春を謳歌することを認める方向へと転じている。

Idol Schoolのメンバー募集においても、両親に反対されるケースがなくなったわけではないが、学業との両立という形で認める保護者が多い。同グループは月曜から金曜は学校に専念、土日だけ活動するという「週末アイドル」のスタイルを取っているという。メンバーも取材に対し、「せっかくの青春なのだから、自分たちのやりたいことに取り組みたい」と意欲的に話していた。

中国でいつの間にやら始まっていた「アイドル戦国時代」。アニメ以外は海外では売れないと思われてきた日本のコンテンツやビジネスモデルが意外な競争力を持っていることを示唆する事例ではないだろうか。

ネット対応の遅れがプレゼンスの低下につながった過去を見てもわかるとおり、問題はコンテンツそのものではなく、売り方やマーケティングにあるのではないか。中国の日本式アイドル隆盛は重要なヒントとなりそうだ。

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