「菅内閣の支持率急落」を正しく読み解く

2021年5月18日(火)17時48分
北島 純

政権の不支持率を低減させる方法

ここで注目されるのは、共同通信の世論調査(5月15日〜16日実施)だ。不支持率は47.3%で、前回(4月)に比べて11.2ポイントも増加しているが、同時に、内閣支持率は41.1%を維持している。これは前回と比べて2.9ポイント減少したに過ぎない。

この調査結果は、菅政権の支持率「急落」というより、不支持率の「増大」を示していると言えそうだ。これは他社には出てない数値傾向であり、これを「気まぐれの数値」と見るか、あるいは何らかの示唆があると見るべきか。

菅政権が昨年9月に発足してから、政権の不支持率が10ポイント超えて増加する事態が発生したことが一度ある。それは昨年12月の調査だ。共同通信の場合、11月の不支持率19.2%に対して12月は32.8%であり、13.6ポイントの増加だった(支持率は、63.0%から50.3%へと12.7ポイントの減少)。各社同様の傾向で、毎日新聞は13ポイント、朝日新聞は15ポイント、NHKに至っては17ポイントの不支持率激増を見せていた。

当時は、コロナ感染確認者数が増大していく一方で、ワクチン供給の見通しがたっていない状況であり、政権肝いりのGo Toトラベル事業に対する批判も大きくなっていた。結果として年明け1月7日に菅政権は2回目の緊急事態宣言発令に追い込まれるが、12月の世論調査は、そうした状況で実施されたものだった。

もちろん当時の世論調査結果は、コロナ感染拡大だけではなく、例えば鶏卵業者汚職事件等に起因する政治不信など、様々な要因が複合的に絡むものだったといえよう。しかし、菅政権を襲った10ポイント以上の不支持率増大という最初の荒波も、現在から振り返るとコロナ対策の不満が主要因だったことは間違いない。政権発足時には7割近くに達していた菅政権支持率はその後、同水準に回復せず、4割から5割前後で推移することになった。その意味で、相当の痛手を政権として負ったことになる。

世論調査における政権支持率の回答は、「支持する」か「支持しない」か「分からない(その他無回答)」の三者択一が基本だが、共同通信の場合、前回「分からない」と回答した者は19.9%いた。それが今回は11.6%に減少している。その差8.3ポイント分が今回、コロナ対策という身近でかつ喫緊の課題に対して、限度を超える不満を感じたために「支持しない」という回答に転じた――そう見ると、支持率がそれほど減少していないにもかかわらず、不支持率が激増していることの説明になるかもしれない。

つまり、政権を支持する訳でも支持しない訳でもない層(無党派層と重なるとは限らないが、それに近い層)が、限界を超える不満を感じるかどうかの「一線」というものがあり、それを超えないことが、不支持率を増やさないために必要だということだろう。もともとの政権支持層にとっては、そのような「一線」は耐えることができるラインということになる。仮にそうだとした場合、菅政権としては対処療法としてなりふり構わずコロナ対策を進め、具体的な成果を示すことでコロナ対策への不信と不安を一定レベル以下まで押し下げることさえできれば、政権の不支持率を低減させることが可能になるであろう。

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