韓国の新型コロナウイルスの勝者は自営の小さなフライドチキン専門店?
<韓国退職者の生きる縁として日本のコンビニよりたくさんあるフライドチキン専門店に追い風が吹いているが、実態は3年しか続かない厳しい現実>
コロナ禍で多くの飲食店が業績悪化に苦しむ中で、一時は「自営業者の墓」とも言われていたフライドチキン専門店の売上が好調である。新型コロナウイルスの影響でデリバリーや持ち帰りによる中食需要が増加したからである。
韓国のフライドチキン専門店業界1位の「KyoChon」チキンの上半期の売上は2,156億ウォンで、昨年の上半期より15.8%増加した。業界2位の「bhc」の売上の増加幅は約30%だ。売上の増加をきっかけに「KyoChon」チキンを展開するKyoChon F&Bは11月12日にKOSPI(大手優良企業を対象とした韓国の有価証券市場)に上場し、上場日に上限価格を達成した。飲食業(外食)のフランチャイズとしては初めての上場である。KyoChon F&Bは、現在、韓国を含めた世界7カ国に1234店の店舗数を2025年までに1,500店まで増やす計画である。
韓国は「チキン共和国」と言われるほど、フライドチキン専門店が多い。韓国統計庁の発表によると、2018年時点の韓国のフライドチキン専門店の数は3万7000店に達している。一方、民間シンクタンクのKB経営研究所は、フライドチキン専門店に「ビール&フライドチキン専門店」(以下、フライドチキン専門店)で認可を受けた店を加えて、韓国のフライドチキン専門店は2019年2月現在約8万7000店に達すると発表した。2019年3月末時点の日本のコンビニ店舗数5万8340店を大きく上回る数値である。
韓国にフライドチキン専門店が多い理由としては、2016年に「高齢者雇用促進法」が施行されるまで定年が法律で義務化されていなかったことがある。韓国では2013年4月30日に「高齢者雇用促進法」が国会で成立したことにより、2016年からは従業員数300人以上の事業所や公的機関に、さらに2017年からは従業員数300人未満のすべての事業所や国、そして地方自治体に60歳定年が義務化された。
退職後、比較的手軽に始められる
60歳定年制がない時代には、50代前半や50代半ばで会社を辞めた中高年者は退職金等を使ってフライドチキン専門店をオープンした。デリバリーや持ち帰り中心の店なら狭くても問題なく、他の飲食店に比べて賃貸料などの費用や開店費用(平均5,725万ウォン、日本円で約549万円(2020年12月4日為替レート適用))の負担が小さい。また簡単な研修を受けて一週間ぐらい練習をすれば開店できること等がフライドチキン専門店が人気の理由だった。
フライドチキン専門店の年間開店数は2014年に約9,700件でピークに達して以降は減少傾向に転じたものの、2018年時点でも約6,200店が新しく開店している。2015年以降の減少は2016年に「高齢者雇用促進法」が施行され、60歳定年が義務化されたのが一つの原因と考えられる。
■韓国におけるフライドチキン専門店の年開店・閉店数
出所)行政安全部「地方行政認・許可データ」ホープページ(2020年12月4日接続)、キムテファン(2019)「KB自営業分析報告書:チキン店の現状及び市場分析」
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