アングロサクソンモデルの黄昏──「対米従属」日本が打つべき次の一手は

2019年8月15日(木)16時30分
河東哲夫

これから貿易問題、そして思いやり予算をめぐる交渉が本格化すると、日本ではアメリカに対する不満が噴出しやすい状況になる。これまで平和主義の世論に縛られて、自ら自主防衛力強化の手を縛り、対米従属に甘んじてきた屈辱感と欲求不満は、「親米エリート」の間にも鬱積している。「アメリカ離れ」という言葉が、いったん転がりだすと止まらなくなる。

しかしそれは、北風のふきすさぶ厳冬下で外套を脱ぎ棄て、身軽になったと喜ぶのと同じばかなことだ。日本はアメリカに対して思いやり予算を増額するのと引き換えに核抑止力、F-35など先端兵器の技術情報開示をきちんと確保しつつ、同時に自前の防衛力を強化したい。今年の巨人軍ではないが、手持ちの札のもっとうまい使い方を考えるのだ。地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」にロシアが反対するのを逆手に取って、米ロ中・北朝鮮間の核軍縮交渉を呼びかける、というようなやり方だってあるのだ。

アメリカ包囲網でトランプに「お灸」を

24日にはフランスで、主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる。マクロン大統領と公開で罵り合う関係になっているトランプはドタキャンするかもしれない。彼が来ようが来まいが、日本、ドイツ、フランス、カナダで自由、民主主義、人権の尊重という原則を世界に呼びかければ、トランプにも少しは効き目があるだろう。

経済(特に先端技術と通貨)と軍事力でダントツの力を維持するアングロサクソンの時代はまだ終わるまい。しかし、ただ「ついていく」時代は終わった。アングロサクソンのトリセツを、仲間の国々と考えていく時代だろう。

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