なぜEUは中国に厳しくなったのか【後編】3つのポイント=バルト3国、中露の違い、ボレル外相
このように、どんどん問題がエスカレートしてきている。ロシア人とは全然異なる。まるで野蛮人を相手にしているかのようなのだ。
特に問題になったのは、北京から制裁を受けた5人の欧州議会議員の中には、対中関係で大きな影響力を持つドイツのグリーン・ラインハルト・ビュティコファー中国議会グループ議長も含まれていたことだ。
中国共産党によれば、「ビュティコファー氏は、中国が新疆ウイグル自治区や香港の問題を処理していることを言い訳にして、頻繁に中国を批判し、中国とEUの投資協定を妨害している」から制裁リストに加えたのである。
このことが欧州議会で5月21日、中国との投資協定の凍結を「賛成599、反対30、棄権58」の圧倒的多数で採択した、最も大きな理由ではないだろうか。議員に対する中国の制裁行為は、党派を超えて、欧州議員達を怒らせたのだ。
中国は、アメリカとの関係が冷え込むなかで、EUとの投資協定の実現を切望していた。そもそも、一帯一路の終点はヨーロッパである。欧州議会をなめたために、習近平の一帯一路政策は、根本から見直しを迫られる可能性がある。
中国のなめきった態度
中国とロシアは、その関係の密接さを強調し始めた。
前編で解説したように、EUの頭の中にあるのはむしろロシアであり、ロシアと中国の結託を警戒している。しかし、ロシアと中国がそれほど一枚岩なのかは、まだよくわからない。
ロシアは、EUに対してもアメリカに対しても、関係の一層の悪化は望んでいないようだ。バイデン大統領との会談も成功させた。
対して中国は、アメリカには強気に出ては見せても、関係の悪化を望まないシグナルを同時に送っているのに、EUに対しては態度が異なる。
3月22日の中国共産党の『環境時報』は、以下のように伝えている。
取り残されと感じているEUは、中国とロシアに対して「人権問題」での制裁を求めることで、政治的な存在感を強調したいと考えている。EUは、人権を超大国間の競争に参加するために使用できる武器と見なしているためだ、とサイ部長(the China Institute of International Studiesの欧州部部長)は言った。ワシントンほどの財政力や軍事力を持たないEUにとって、人権は最も便利で有利な武器だと認識していると付け加えた。