世界でもっとも多い統治形態は民主主義の理念を掲げる独裁国家だった
<最新の民主主義指標から見ると、現在、もっとも多い統治形態は、選挙独裁主義で、62ヵ国、世界人口の43%となっている...... >
本稿は埼玉大学国際シンポジウム「パンデミック時代における科学技術と想像力」(2021年3月27日、28日)の基調報告として発表する内容のうち、現状整理の部分をふくらませた。シンポジウムではこれからの課題と可能性に主に触れる予定である。無償のウェビナーで申し込みは3月25日まで延期となったので関心ある方のご参加を歓迎する。
最新の民主主義指標から見える民主主義から権威主義への移行
民主主義の危機あるいは衰退が叫ばれて久しい。最近、公開された民主主義の指標として知られるイギリス、エコノミスト誌Intelligence Unitの「民主主義指数」とデンマークのV-Demの最新版ではいずれも民主主義の後退が確認された。特に民主主義指数では2006年に最初の指標を公開して以来最悪の数値となった。特に市民の自由の制限や反対意見への抑圧が見られたと報告している。
民主主義指数では、統治形態を完全な民主主義(Full democracies)、瑕疵のある民主主義(Flawed democracies)、ハイブリッド体制(Hybrid regimes)、権威主義体制(Authoritarian regimes)の4種類に分類しており、今回の結果では民主主義(完全な民主主義、瑕疵のある民主主義)は国の数では55%、人口では49.4%となった。国の数ではかろうじて過半数を上回っているものの、人口では過半数を割っている。
V-Demでは統治形態を自由民主主義(Liberal Democracy)、選挙民主主義(Electoral Democracy)、選挙独裁主義(Electoral Autocracy)、完全な独裁主義(Closed Autocracy)の4つに分けている。今回の調査で民主主義(自由民主主義、選挙民主主義)の人口は32%に減少した。世界の人口の3分の2が非民主主義の国で暮らしていることになる。
下図はV-Demの4つの統治形態の国の数と人口の推移である。レポートでも指摘しているが、選挙民主主義が減少し、入れ替わるように選挙権威主義が増加しているのがわかる。現在、もっとも多い統治形態は、選挙独裁主義で、62ヵ国、世界人口の43%となっている。
V-Demでは選挙民主主義から選挙権威主義への移行パターンを下記のように解説している。
1.選挙によって政権を取る
2.メディアと市民社会を弾圧する
3.社会を分断する
4.敵対者を貶める
5.選挙をコントロールする
『民主主義の死に方―二極化する政治が招く独裁への道―』(スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジラット、新潮社)や、以前の記事で取り上げたのとほぼ同じ手順が踏襲されているようだ。
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