日本で「ツタンカーメンのエンドウ」が広まった理由、調べました
1986年、筑波で開催されていた科学万博で、日本の子どもたちが栽培したツタンカーメンのエンドウが、万博エジプト館のガミール・アリー・ハムディー館長に贈られた。エジプト人の館長ははたして何を思っただろう。同館長のお礼のメッセージには、引用符をつけてツタンカーメンのエンドウと記されているが、それがツタンカーメンの墓から発見されたことには触れていない。
ツタンカーメンの墓で発見されたと思って育ててきたのにと、がっかりする人もいるかもしれない。だが、せっかくこの豆をきっかけにエジプトに関心をもってくれたのならば、その関心を持ちつづけてもらいたい、と中東研究者としては切に願うしだいである。ちなみに、豆の味はおいしかったこともあらためて指摘しておく。
[主な参考文献]
Henderson, B. 2005"William Plate, an Unknown Acquaintance of Karl Marx at the British Museum: A Biographical Sketch," Electronic British Library of Journal, 8:1-9
Hepper, F. N. 1990. Pharaoh's Flowers: The Botanical Treasures of Tutankhamun, London: HMSO
Moshenska, G 2017 "Esoteric Egyptology, Seed Science and the Myth of Mummy Wheat," Open Library of Humanities, 3 (1): 1
Zohary, D., Hopf, M. & Weiss, E. 2012. Domestication of Plants in the Old World, Oxford University Press (4th edition)
上地ちづ子1987『のびろ のびろ!ツタンカーメンのえんどう』耀辞舎
リズ・マニカ1994『ファラオの秘薬----古代エジプト植物誌』八坂書房
※5月28日号(5月21日発売)は「ニュースを読み解く哲学超入門」特集。フーコー×監視社会、アーレント×SNS、ヘーゲル×米中対立、J.S.ミル×移民――。AIもビッグデータも解答不能な難問を、あの哲学者ならこう考える。内田樹、萱野稔人、仲正昌樹、清水真木といった気鋭の専門家が執筆。『武器になる哲学』著者、山口周によるブックガイド「ビジネスに効く新『知の古典』」も収録した。
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