豪不動産市場、外国人の購入規制で急速な価格調整リスク

2017年6月14日(水)16時30分

[シドニー 14日 ロイター] - オーストラリア当局が不動産市場の過熱抑制に向けて外国人購入者を対象とした購入規制に乗り出したため、中国人投資家は豪不動産物件に背を向け始めている。不動産市場で今後急速な価格調整が進むリスクが高まっている。

中国本土からの不動産投資先として人気の高いバンクーバーやシンガポール、香港などでも購入規制は既に導入されている。ただ、豪不動産市場では既に価格調整の兆しがみられ、こうした規制の経済への影響が懸念される。

シドニーの不動産セールスコンサルタントのSutono Pratiknya氏は「以前は物件を紹介するツアーを1カ月に5回ほど行っていた。空港で海外からの投資家を出迎え最新の物件を見せていたが、今はこうしたツアーはまったくない」と述べた。

国内銀行は住宅ローン融資に大きく依存しており、中銀は家計債務の拡大を警戒している。住宅価格が急速に下落すれば、26年間景気後退(リセッション)を回避している豪経済への影響は避けられない。

ここ1年ほどで、東海岸の全ての都市で不動産規制が導入されている。シドニーでは、外国人の不動産購入税を引き上げ、大手銀行も外国人向け住宅ローンを停止。政府は、外国人が保有物件を一定期間空家にした場合に罰金を課すことを決定した。

住宅産業協議会のエグゼクティブ・ディレクター、デービッド・ベアー氏は「不動産開発の多くは海外からの投資に依存している。住宅市場の過熱が沈静化しつつあるなか、規制の影響は1─1年半前よりもずっと大きい」と説明する。

不動産コンサルタント会社のコアロジックによると、2009年以降2倍に値上がりしたシドニーの住宅価格は、5月に下げに転じた。新築物件の供給過多を背景に、需給状況を反映するといわれるオークションの在庫処分率も低下している。

中国人投資家をターゲットにした多くの物件をシドニーで開発中のマンション開発最大手メリトン・グループなどへの影響は避けられな見通し。

一方、開発業者の中には、政府による1軒目住宅購入時の支援策もあり、外国人の物件購入が減少したとしても、国内の堅調な需要がその穴埋めをするとの見方もある。

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