英国民投票、「EU離脱」選択で何が起こるか

2016年6月20日(月)17時44分

[ブリュッセル 19日 ロイター] - 欧州連合(EU)は6月23日の英国民投票を控え、EU離脱(ブレグジット)の結果が出た場合のシナリオ作りを進めている。数多くのEU高官や加盟諸国外交官への取材に基づき、離脱の場合の「行程表」をまとめた。

●24日(金曜)─3つ、もしくはそれ以上のR

投票締め切りは23日午後10時(2100GMT=日本時間24日午前6時)。主だった出口調査は計画されていない。投票結果はブリュッセルで夜が明けるころに判明する見込み。

キャメロン英首相は国民投票で離脱が決まれば、「速やかに」EUに通告するとしているものの、少なくとも数日かかる可能性もある。首相にとって敗北を意味する離脱となれば、保守党内から辞任圧力が強まるだろう。辞任の圧力はたとえ残留が決まっても強まる可能性もある。

金融市場は荒れ、イングランド銀行(英中央銀行)と欧州中央銀行(ECB)はポンドやユーロに対する「ブレグジット・ショック」への対処方針を用意している。

加盟国のEU問題担当相や大使らが午前10時(0800GMT)までに定例会合のためルクセンブルクに集まる。行動をとるための最初の機会となる。

ドイツとフランス、EUの各機関は共同声明を発表する見込み。EU創設6カ国(ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)の外相が24日にベルリンで会合を開く可能性がある。

欧州委員会のユンケル委員長が午前10時30分(0830GMT)に、ブリュッセルの本部でトゥスクEU大統領、シュルツ欧州議会議長を会談。持ち回りのEU議長国を現在務めるオランダのルッテ首相も参加し、メッセージを発表する。

「遺憾(Regret)」、英国民の意思の「尊重(Respect)」、EU統合に向けた「決意(Resolve)」という3つの「R」が盛り込まれそうだ。

メッセージには4つ目のRが盛り込まれる可能性も。それはおそらく「報復(Reprisal)」だ。離脱する国が直面する苦境を警告することによって、他国が追随しないよう先手を打つ狙いだ。

●25日(土曜)─ユーログループ緊急会合も

一部のユーロ圏財務相はユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の緊急会合が開かれる可能性があると示唆。ただ、高官らによると、銀行セクターや市場混乱への対応はECBやその他規制当局が行うものとして、ユーログループによる緊急会合は開かれない見通し。

●26日(日曜)─EU旗の下に結集せよ

ユンケル欧州委員長は英国のジョナサン・ヒル委員を含む欧州委員28人を集め、臨時会議を開く。英国のEU離脱協議の責任を担うのが欧州委だ。

EU当局者らはブレグジットに備えた「プランB」はないと説明。しかし、昨年夏のギリシャ問題で似たような否定をしつつ、緊急事態に備えていたことを考えれば、額面通りには受け取れない。

「月曜(27日)までにすべての準備を整える必要がある」とEU高官は話す。

加盟国の大使や指導者らのアドバイザーである「シェルパ」は、国民投票でブレグジットが決定した場合、ブリュッセルで会合を開く予定。

●27日(月曜)─秩序立った協議を表明

世界の金融市場にとって新たな1週間が始まり、投資家や有権者は英国とEUがどこへ向かっているのか手掛かりを欲するだろう。

英国とEUは秩序立った協議を進めていくこと、そして直ちに何かが変化するわけではないことを表明する。

●28日(火曜)─キャメロン首相、離脱表明を迫られる

2日間にわたるEU首脳会議が予定されている。離脱結果が出ればキャメロン英首相の政治生命は終わるかもしれないが、与党保守党が後継者を選出するまでは現職にとどまるだろう。首相はブリュッセルで開かれる夕食会に出席する見通しだ。

最大の注目点は、キャメロン首相がトゥスクEU大統領に対し、離脱の法的根拠となるEU法50条の発動を通告するかどうかだ。

EU当局者や外交官らは、英国がすぐさま離脱手続きを開始することを望んでいる。現時点ではEUが英国にそうすることを強制する法的手段は見当たらない。

EU条約では加盟国の排除を認めていない。ただ、政治的な圧力が強まり、有権者の離脱意思を尊重することを英国政府に求めるだろう。英国抜きで他の27カ国が協議を開始する見通し。

キャメロン首相が国民投票で勝利すれば、首脳会議は首相のEU改革案に関して早急に議論する。同案は移民対応で英国に譲歩した内容となっている。

●29日(水曜)─キャメロン首相抜きで首脳会議

EU首脳会議2日目、キャメロン首相を除く27カ国の首脳が英国離脱後の道筋について協議する。EU法50条では、離脱協議の期限を2年間と定めている。EUは英国離脱に伴う予算の穴を埋めなくてはならない。また、英国に住むEU市民および欧州大陸に住む英国人の将来の権利を再保証する必要がある。

独仏を筆頭とするEU指導者らは直ちにEUの結束と統合を推進しようとするだろう。懐疑派の英国が去ることで、EUの軍事協力緊密化が再び俎上(そじょう)に上りそうだ。

2017年のフランス大統領選候補である極右のマリーヌ・ルペン氏の台頭を抑えるため、若年層を中心とした雇用創出などの対策も打ち出されそうだ。

EU指導者らは欧州委員会に交渉権限を与える。英国の一部では、新たな貿易条件をめぐる協議を含むため、離脱交渉が2年を超えるとみる向きもある。しかし、期限の延長にはEUで満場一致の賛成が必要となるが、EU内でそうなるとみる向きはほとんどいない。

一部では、将来の貿易条件に関する英国との協議は並行して進められるとの指摘も出ている。ユンケル委員長はこれまで、EUは2年間の離脱協議を優先し、その後は「白紙状態で」協議を開始すると語っている。

●30日(木曜)以降─2年間は現状維持

英国がEU離脱手続きに着手しても、2年間はすべてのEU法が英国に適用され、その後は一切適用されなくなる。

欧州議会の英国議員やヒル欧州委員は現職に留まり、EU公務員である英国人数千人も職務を続行し、英国の閣僚はEU閣僚理事会メンバーに名を連ねたままだ。ただ、彼らは実質的な発言権を持たなくなる。

また、英国は2017年後半に予定されるEU議長国の座を、次の順番のエストニアに譲るだろう。

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