アングル:北朝鮮の水爆実験、日韓ミサイル防衛強化論が再燃も
[香港 6日 ロイター] - 北朝鮮による水爆実験実施の発表で、日本や韓国のミサイル防衛強化論が再び高まる可能性がある。これに対して中国からの反発も予想される。
専門家によると中国政府は、米国と日本がミサイル防衛能力向上を検討したり、米国が韓国に対してこれまで受け入れを拒否されている弾道ミサイル迎撃用の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をより強く求めるような動きがないかどうか事態を注視している。
これらの取り組みが出てくれば、中国と米国およびその同盟国の軍事的な緊張が高まってもおかしくない。既に南シナ海ではこうした緊張関係が最も浮き彫りになっており、米国は中国が重要な貿易ルートである同地域を軍事基地化する事態を懸念する一方、中国がこれを否定している。
香港の嶺南大学の核安全保障専門家、Zhang Baohui氏は「中国は日本ないし韓国がミサイル防衛能力を高める動きには非常に神経を尖らせている。北朝鮮の今回の発表が表向きの理由だとしても、中国当局は自らの核抑止力に制約を加える試みと受け取るだろう」と話す。
同氏は、中国政府は北朝鮮との関係正常化を望んでいるため、水爆実験発表に抑制的な反応しか示さないとの見方を示した。
シンガポールのラジャラトナム国際問題研究所の安全保障アナリスト、リチャード・ビットジンガー氏は、北朝鮮の動きは日本がより大きな脅威とみなす中国に向けた防衛力を強化するための「隠れ蓑となる口実」を与えたと指摘した。
<THAADの威力>
中国はとりわけ、進んだ技術を備えたTHAADを重大視している。米軍当局者はこれまで、韓国はTHAADを自前のより旧式なミサイル防衛システムと統合する必要があると言い続けてきた。
北朝鮮は核弾頭を小型化して長距離ミサイルに搭載できるようになっているとの観測もあり、米国にとって西海岸まで届く恐れがあって最も脅威となるこの長距離ミサイルをTHAADなら撃ち落とすことができる。
一方で韓国は、最大の貿易相手国である中国に気兼ねして、米軍とは独立したミサイル防衛システムの運用を続け、THAAD導入の公式協議開催も避けてきた。
THAADには、2000キロメートル遠方までの弾道ミサイルを追跡するレーダーがあり、中国本土の奥深くまでもが対象になる。
日本は将来型のTHAADとともに、イージス艦の弾道ミサイル防衛システムの陸上版の導入を視野に入れつつある。
防衛業界関係者によると、日本がTHAADの導入まで検討しているのは北朝鮮よりも長期的な中国からの脅威が原因だという。
(Greg Torode記者)
*見出しを修正しました。
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