アングル:インド新方式GDP、経済実態の正確な反映に疑問符
[ニューデリー 28日 ロイター] - インド政府が29日に公表する1─3月期国内総生産(GDP)成長率は、2期連続で中国を上回る見通しだ。だが「経済成長が非常に鈍いと実感するのはなぜだろう」という疑問を投げかけることが許されるかもしれない。
就任から1年が経過したモディ首相は、世界でインドを最も成長している主要国の1つへと転換させたとの称賛を浴びている。
それでも政府が今年導入したGDPの新計算方式がマクロ経済に対する見方をゆがめてしまったのではないかとの疑いは消えない。
キャピタル・エコノミクスのインド・エコノミスト、シラン・シャー氏は「インド経済はGDPが示唆するであろう内容ほど力強くはない。こうした数字を政策と関連づけるべきではなく、中央銀行と政府は他の経済活動を示す統計に目を向けなければならない」と述べた。
GDPの堅調さは、鉱工業活動の弱さやさえない企業業績、なかなか鮮明な回復が見えない銀行貸出などとつじつまを合わせるのは難しい。
ロイターがまとめたエコノミスト調査によると、1─3月GDP成長率は7.3%(昨年10─12月実績は7.5%)だった。新計算方式では3月までの2014/15年度は、前年度の6.9%から7.4%に加速するとみられる。
過去2年続けて5%未満という25年ぶりの低成長局面から勢いを取り戻せていないことを示していた旧方式のデータからすれば、目を見張るほどの持ち直しぶりといえる。
アナリストは中銀が6月2日の会合で今年3回目の利下げに動くと予想しているものの、本当にインドがこれほど順調な成長軌道にあるとすれば、追加利下げの必要性はずっと小さくなるかもしれない。
しかし実際の経済は需給の緩み(スラック)に苦しんでいて、企業の売上高や鉱工業生産は下向きだ。財の輸出も5カ月連続で減少している。
また建設活動の先行指標であるセメントと鉄鋼の生産は極めて低調で、14/15年度の銀行貸出は20年ぶりの低い伸びにとどまった。
中銀も、GDPの新計算方式が全体状況を見えにくくしていると警告するとともに、経済成長は依然としてなかなか加速しないと認めている。
モディ政権になってそれ以前よりも経済状況が改善した。とはいえ、企業は改革がごくわずかしか実行されていない点に不満を訴え、既にバランスシートが膨れ上がっているために投資拡大には及び腰。不良債権の増加に見舞われている銀行も、新規融資に慎重になっている。
キャピタル・エコノミクスのシャー氏は「これまでのところ、インドが中期的に経済的な潜在力をフルに発揮できると察せられるだけの取り組みは成し遂げられていない」と述べた。
(Rajesh Kumar Singh記者)
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