アングル:トルコ総選挙、景気減速で与党AKPが苦戦へ
[イスタンブール 25日 ロイター] - 6月7日のトルコ総選挙では、公正発展党(AKP)が2002年に政権の座に就いて以来、初めて経済政策面で苦戦を強いられそうだ。成長が減速し、失業率は高止まりし、家計債務は憂慮すべき水準まで積み上がっている。
投資家はAKPが辛うじて単独過半数を確保し、現在の経済政策チームを維持すると予想している。ただ、注目度の高い世論調査の一つでは、AKPが過半数割れして連立政権を余儀なくされるとの予想が示されている。
憲法改正に必要な、過半数を大幅に超える議席に届かないのはぼ確実で、AKPの創設者であるエルドアン大統領の権勢拡大もかなわない議席数にとどまるだろう。
トルコは家計と企業の債務削減や貯蓄強化、生産性向上に向けた改革を先送りしてきた。
金融サービス企業Unlu & Coのマネジングディレクター、ベダト・ミズラヒ氏は、与党が総選挙で苦戦すれば、願ってもない警鐘になると指摘。「AKPの人気がある程度衰えれば、経済運営・改革にもっと集中せざるを得なくなる。ここ数年、改革はまったく進んでおらず、トルコは他の新興国に遅れを取っている」と語る。
<高成長にブレーキ>
トルコはAKP政権の下、目覚ましい経済成長を享受してきた。2002年の一人当たり国内総生産(GDP)は3600ドルと、赤道ギニアを辛うじて上回る程度だったのが、13年には3倍の1万1000ドルに増大し、マレーシアを追い越した。年間のGDPは8000億ドルを超え、世界の経済大国上位20に悠々と収まっている。
しかし経済成長にブレーキがかかり、成長率は13年の4%超から昨年は2.9%に減速した。トルコ経済は建設と個人消費、借金に依存し過ぎており、家計の貯蓄拡大が何としても必要だと指摘されている。
ザ・ターキー・アナリストのマネジングエディター、ハリル・カラベリ氏は「トルコ経済は一種のバブルだ。外資流入のおかげで人々は借金と消費が可能になり、それにあぐらをかいている。トルコの貯蓄率は極端に低い」と話した。
トルコの経常収支赤字は昨年、GDP対比5%を超え、家計債務と併せて頭痛の種となり続けている。
過去10年間で消費者の債務は11倍に膨らんだ。ドル建ての債務はGDP対比30%近くに達しており、通貨リラが急落するたびに借り入れコストは上昇している。
景気減速は最大野党の共和人民党(CHP)に攻勢のチャンスを与えてきた。
イスタンブールの経済・外交政策研究センターのシナン・ウルゲン会長は「今回の選挙まで、CHPは経済について語りたがらなかった。経済は与党の売りと見られてきたからだ。しかし状況は変わり、CHPがAKPから経済のお株を奪った」と述べた。
しかしAKPの苦戦にもかかわらず、CHPがAKPに勝利する見込みはない。労働者階級に属するアナトリア人住民から支持を得られないことが原因で、30%超の支持率を確保できずにいる。
<ババジャン氏の去就>
多くの外国人投資家にとって最大の注目点は、投資家の信頼をつなぎとめる役割を果たしてきたババジャン副首相の去就だ。
ババジャン氏はAKP政権13年の歴史の大半において経済問題を司ってきたが、党の規定で任期は3回までに制限されているため、再出馬ができない。
アンカラの高官2人がロイターに明らかにしたところによると、AKPが新内閣を組成した場合、ババジャン氏は少なくともダウトオール首相の顧問役として経済チームにとどまる見通しだ。
シムシェキ財務相は続投しそうで、トゥルハン元中央銀行副総裁も経済チームメンバー候補と目されている。
Unlu & Coのミズラヒ氏は、ババジャン、シムシェキ両氏が経済チームに留まれば外国人投資家は安心し、通貨リラの支援材料になるとし、「私が話をする投資家の大半はこの2人の名前しか知らない」と語った。
(David Dolan、Asli Kandemir記者)
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