アングル:中国鉄鋼輸出、鉄鉱石価格の下落で急増 諸外国は警戒
[上海 26日 ロイター] - 鉄鉱石価格の大幅下落を追い風に中国の大手鉄鋼メーカーが生産、輸出を増やしており、欧州連合(EU)やインドなど諸外国との間で軋轢が生じている。
中国国内の鉄鋼需要は縮小し、業界は慢性的な過剰生産能力にあえいでいる。しかし鉄鉱石価格の下落をてこにして多くの大手鉄鋼メーカーは2014年、記録的に輸出を伸ばして業績を改善させた。
世界最大の鉄鋼生産国である中国の業界再編を待ち望んできた海外メーカーにとって、これは歓迎できない動向だ。
中国の昨年の合金輸出は約50%増えて過去最大の9400万トンに達した。
中国鉄鋼メーカーの最新の決算を見ると、2014年に赤字を出したのは大手メーカー18社中3社にとどまり、前年の5社から減った。13年に黒字だった13社中、6社は14年に増益を果たした。
マーチャント・フューチャーズのアナリスト、ZhaoChaoyue氏は「沿岸部にある中国の総合的な鉄鋼メーカーは世界で最も競争力が高い部類に入る。輸入鉄鉱石の価格下落によって最大の恩恵を受け、それを国内外でのシェア拡大に役立てているからだ」と話す。
海上輸送される鉄鉱石の価格は過去1年間で50%も下落した。巨大な鉄鉱石生産企業がシェア拡大を狙い供給を増やしたことが影響した。
<大手メーカーに追い風>
中国の大手鉄鋼メーカーは価格の下がった輸入鉄鉱石を直接、沿岸部にある製鉄所に送り、近隣の顧客に売ったり海外に輸出したりすることが可能だ。
年間生産量が1000万トンを超えるこうした大手メーカーはまた、価格下落を背景にスポット価格での鉄鉱石購入を増やしている。こうした契約方式はかつて、小回りの利く民間メーカーが主に享受してきた。
ホウ素鋼に対する輸出税還付制度が廃止されたにもかかわらず、第1・四半期の中国の鉄鋼輸出は41%増え、世界中のメーカーが警戒感を募らせた。
韓国のポスコは21日、中国とロシアが輸出攻勢を強め、価格の下落を招くとの見通しを示した。
EUは中国・台湾製の冷延ステンレス鋼板に反ダンピング(不当廉売)関税を課そうとしている。インド当局も中国、マレーシア、韓国製の一部の工業用鉄鋼に対する反ダンピング課税を勧告した。
<進まぬ業界再編>
中国は2017年までに製鉄所の数を40%超減らして300未満とし、25年までには巨大鉄鋼メーカーを3、5社に絞る計画を示している。2014年の生産量8億2300万トンのうち、上位10社が占める割合は37%だったが、これを60%に高める狙いだ。
しかし過剰生産能力の縮小はまだ実を結んでおらず、主要メーカーは沿岸部での新プラント建設を通じてさらなるコスト削減を目指している。
このほか、廃止されたホウ素鋼に対する輸出税還付制度に代わる新たな同還付制度を獲得しようと動いているほか、東南アジアや南米などの新興国地域への輸出を狙っている。
昨年のインド向け輸出は前年比で倍増し、フィリピン向けは80%増えた。
香港の輸出業者、スマート・タイミング・スチールのシニア・トレーダー、ビル・チェン氏は「中国の輸出急増は、既に諸外国からの懸念と不満を引き起こしており、これらの国々は反ダンピング措置を強化しようとしている」と語った。
(Ruby Lian、 David Stanway記者)
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