アングル:インドネシア製造業、ルピア安でも輸出伸びず

2015年4月10日(金)13時44分

[ジャカルタ 10日 ロイター] - インドネシア経済は、アジア通貨危機の際に壊滅的な打撃を受け、1998年には13%もの大幅なマイナス成長に陥っていた。しかし、通貨ルピアの急落を背景に輸出が増加に転じ、経済も見事な復活を遂げた。

インドネシア経済の現在の成長率は5%程度と、5年ぶりの低ペースであり、ルピアは最近、1998年以来となる安値水準を記録した。

ルピアが昨年6月以来、対ドルで9.3%下落していることを踏まえると、インドネシア製品は海外で割安となり、輸出は増加するはず。

しかし、人件費上昇や不十分なインフラ、官僚主義などの要因により、今回のルピア安局面では輸出増・景気回復の流れになっていない。

インドネシア経営者団体の代表は「人件費やその他コストが毎年のように上昇している」とし「本当に困っている」と訴えた。

繊維製品はインドネシアを代表する輸出品だが、もはやベトナムに追い越されている。ベトナムは2000年には繊維製品の輸出で世界のトップ30にようやく入る程度に過ぎなかったが、国連の統計によると、2013年には世界7位に浮上。輸出額は179億ドルに達した。

一方、インドネシアは11位から14位に転落。輸出額は77億ドルにとどまり、世界でのシェアも2.4%から1.6%に低下した。

<賃金が急上昇>

インドネシア家具メーカーの業界団体代表者は、欧州と米国のバイヤーが発注先をインドネシアからベトナムに変えていると指摘。そのため、業界団体の加盟企業は今年、4000万ドルを失った、と述べた。

ルピア安は輸出にプラスだが、全般的な競争力低下は補えない。

工場主の多くは、最大の問題は賃金の急上昇、と口をそろえる。スハルト体制下では賃金は低く抑えられていたが、権利意識に目覚めた労働組合の突き上げにより、賃上げに応じざるを得なくなっている。さらに2014年末の高インフレも賃金上昇に拍車をかけている。

靴メーカーの業界団体の代表は、月間の最低賃金がここ3年間で倍の270万ルピア(約209ドル)となり、競争力がそがれたと述べた。

インドネシア繊維協会の代表者は、賃金上昇について、公的なメカニズムにそって設定された結果であるならば問題はない、と話す。ただ実際は、労働者の反発があれば、地方の当局者がすぐ法律を変えることも少なくなく「法律はあってないようなもの。無政府状態だ」という。

<コスト抑制が急務>

JPモルガンによると、インドネシアのインフレ率が競合相手の国々よりも高いことから、ルピアの実質ベースでの貿易加重平均レートは、2014年半ばよりも9.8%ほどルピア高の水準にあるという。

世銀の東アジア担当チーフエコノミスト、スディール・シェッティ氏は、輸出業者にとっては「本当に致命的」との見方を示している。

モルガン・スタンレーのデータによると、世界の製造業輸出に占めるインドネシアの比率は、2000年は0.8%だったが、ルピアの実質レートの上昇もあって、2008年には0.5%まで低下している。

世銀のシェッティ氏は、コスト増の抑制に向けて本格的に取り組まなければ、ルピアが対ドルで下落しても輸出は増えない、と話す。「為替で恩恵を受けることもあるが、結局は競争力の問題だ」と強調した。

(Nicholas Owen記者、Gayatri Suroyo記者 翻訳:吉川彩 編集:内田慎一)

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