アングル:米国で中国留学への関心低下、しぼむ「高給取り」の夢

2015年3月13日(金)16時19分

[上海 13日 ロイター] - 米国では過去数年、中国に留学して中国語を学ぼうとする学生の数が大幅に減少しているという。米カリフォルニア大学交換留学プログラム(UCEAP)では、中国への留学数は4年前の半数に満たない水準になると予想されている。

また、ワシントンにある留学団体CETは、2013年以降、中国への関心が低下し続けていると明らかにした。

こうした関心低下を一部の中国専門家は憂慮している。ウィルソン・センター・キッシンジャー米中関係研究所のロバート・ダリー所長は、両国関係の重要性を考えれば、中国語を話し、中国の文化を理解する人材がさまざまな業界に存在することは「国益に関わる問題」だと指摘。「中国の言葉で理解しない限り、われわれは中国に論理的かつ効果的に、そして完全に対処することはできない」と語った。

米国際教育研究所によると、海外留学生の数は全体として若干増加している一方、2012─13年の中国への留学生数は前年比3.2%減の1万4413人だった。

対照的に、米国で学ぶ中国人留学生の数は2013─14年に前年比で16.5%増え、27万4000人を超えた。

<需要の減少>

米国の学生にとって、中国への留学にはいくつか「心配の種」がある。1つは深刻な環境汚染。そしてもう1つが雇用機会の減少だ。留学経験のある中国人が増えており、中国の多国籍企業が採用するのはほとんどが中国人。中国語が話せる外国人の需要は減りつつある。

「中国語を学んで給料の高い仕事に就けると考えて中国に留学したが、そうはならないことがすぐに分かった」。こう語るのは米大学院生のイアン・ワイスガーバーさん(25)。「自分と同じくらい英語が話せる中国人がたくさんいる。それに、中国語は彼らの母語だ」

一方、前述UCEAPのゴードン・シェーファー氏は、中国への留学生数の減少は、連続して授業を取る必要がある科学やテクノロジー専攻の学生が増えていることも一因との見方を示した。また複数の留学団体の幹部は、学生が中国の大学に自分たちで直接留学する傾向にあることが、従来の留学プログラム利用者が減少している原因の1つだとしている。

中国で学ぶ外国人留学生についてのリポートを執筆した、中国のシンクタンク「中国与全球化智庫」の王輝耀・理事長は、米国には中国への留学を斡旋する団体が少なすぎると指摘。また、米国政府の対策不足にも不満を示した。

<将来の保証>

留学団体幹部の話によると、米学生が中国に滞在しても、その期間は短くなる一方であり、語学を学ぶより旅行が目的であることも多いという。

10年前の中国ブームの後は、中国語への関心は米学生の間で薄れているように見える。語学教育で知られるバーモント州のミドルベリー大学では、中国語の入門クラスの登録者数は、2007年時の約半数の水準だという。同大学のトーマス・モラン教授は、昨年に中国語を履修した学生の総数は「過去10年で最低」だったと語った。

米近代語協会が先月発表した調査結果によると、米国の高等教育機関における中国語の学習者数は2002─06年の間に50%増加し、2006年からの3年間でさらに16%増えた。しかし2009─13年は伸び率がわずか2%に減速した。

「結局は、お金の問題に行き着く」。こう指摘するのは、中国留学に長年携わってきたジョン・トンプソン氏。「最終的に報われるという保証が何もないのに、極めて難しい言語を習うため就職もせずに数年を棒に振るだろうか」

(Alexandra Harney記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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