アンバトビープロジェクト、3年内の黒字化期待=兵頭・住友商社長

2018年5月23日(水)20時01分

[東京 23日 ロイター] - 住友商事の兵頭誠之社長・CEO(最高経営責任者)は23日、ロイターとのインタビューで、マダガスカル共和国で進めているニッケル・コバルト開発プロジェクト「アンバトビー」について、2018年度からの3カ年の中期経営計画中の黒字化への期待を示した。 

立ち上げの遅れや市況下落の影響などを受けて多額の減損損失を計上したプロジェクトだが、 兵頭社長は「今中計の間のどこかの時点で黒字化することを期待している。できれば、今期黒字化して欲しい」と述べた。19年3月期業績予想では、このプロジェクトの持ち分損益は98億円の赤字(前期は141億円の赤字)となっている。 アンバトビーは、採掘から精錬までを一貫して手掛ける世界最大規模のニッケル生産プロジェクト。2005年にプロジェクトに参画した住友商事は、昨年、一部持ち分を追加取得し、現在47.7%を出資している。2012年に生産を開始したものの、立ち上げの遅れやニッケル価格の低迷により、2016年3月期に770億円の減損損失を計上している。

一方、チリ共和国での銅鉱山開発プロジェクト「シエラゴルダ」についても、「19年度に安定的なフル操業になることを目標に頑張ってくれている。手掛けているのは良い鉱物で、操業が安定すれば大丈夫」と述べ、来期の黒字化に期待を示した。 シエラゴルダは、住友金属鉱山 と住友商事が共同で設立した合弁会社が45%を出資、住友商はこれまで計476億円の減損を計上している。 <積極投資> 同社は今月、2018―20年度を対象とした「中期経営計画2020」を発表した。3カ年の投融資は1兆3000億円(前3カ年比46%増)、そのうち3000億円を先端技術などを生かした次世代新規事業に投じる計画だ。

既存事業の投融資額については「各部門が稼いだキャッシュの範囲内」に収めることが基本原則で、総額の1兆3000億円の枠は守る。ただ、将来の成長に必要な有望案件が出てきた場合は、「部門間で柔軟に対応する」意向で、部門ごとの投融資額は増減する可能性があると語った。

資源関連の投資としては「社会で求められているものをしっかり供給していく。需要に応えていく。その原則に合わないことはやらない」とし、銅などの鉱物資源やガスなどのエネルギー分野における新規の上流権益の取得についても「当然やっていく」と述べた。 国内外の電力事業では、2035年をめどに、持ち分発電量ベースでの石炭比率を50%から30%に下げる一方で、再生可能エネルギーを20%から30%に引き上げる計画。ただ、兵頭社長は「総発電容量は増えるため、今後も石炭は手掛けていく」とした。

日米欧といった先進国では「ピュアな石炭火力はもうやらない」方針だが、発展途上国では、経済的観点や太陽光や風力発電の変動を吸収する設備が持てないなど技術的な観点から「石炭火力もやっていく」。世界各地域のニーズに見合った電源を選択していくことになる。 兵頭氏は4月1日付で社長に就任した。「鉄鋼・鋼管部門」が主流とされてきた住友商では異例の「インフラ部門」出身。

(清水律子 大林優香)

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