インタビュー:世界は常に不確実、リスク分散図るオルタナ戦略に勝機=CFM

2017年5月22日(月)20時44分

[東京 22日 ロイター] - 高度な数学的手法や数理モデルを駆使して運用を行う仏クオンツファンド、CFM(キャピタル・ファンド・マネジメント)のフィリップ・ジョーダン取締役は22日、ロイターとのインタビューで、世界は常に不確実性に満ちており、リスクの分散を図るオルタナティブ戦略に勝機を見出していると語った。

同社は、フランスのパリに本拠を置く1991年創業の独立系のクオンツファンド・マネージャーで、22日時点の運用資産残高は約84億ドル(約9400億円)。

主な一問一答は以下の通り。

──今年に入ってからだけでも欧州の選挙やトランプ米大統領の政策を巡る政治リスク、北朝鮮情勢の緊迫など多くのリスクイベントがあった。

「逆に、イベントが無い年などあっただろうか。私は金融業界に34年にわたって身を置いているが、(運用が)難しくない年なんて1度もなかった」

「最近になって(リスク)イベントが多く不確実性が高まったとの声が聞かれるが、われわれは世界は常に不確実を大前提としており、唯一確実なのは世界が今後も不確実であり続けることだと考えている」

「われわれが過去を振り返って見た場合、過去は全ての物事が既に確定してあたかも確実性に満ちて見えるが、過去の瞬間瞬間においては、政治も経済も社会も不確実性に満ちていた。実は過去50年の統計をたどれば、計460余りの危機が起きている。つまり、地球上では年平均で8回危機が発生する計算になる。つまり、われわれは危機が時々起きることが『ノーマル』な世界に生きていることになり、そうした状況を考慮したポートフォリオ構築が必要ということだ」

「つまり、これとこれが確実に起こりそうだからこういうポートフォリオにしよう、というのが旧来の方法だ。一方、われわれは将来起こる出来事は全く予知できない、という前提から出発し、そこからなるべくノイズの少ない良いストラテジーを探すことに注力する。それこそが、われわれの考えるモダン・ポートフォリオ・マネジメントだ」

「世界は常に不確実─それこそがわれわれの出発点だ。その上で、株、先物、為替、債券、社債、オプションなど何千と存在する金融商品の中から、それぞれ全く異なるリスク特性を持つストラテジーをどう選び、分散を図るかがわれわれの仕事。あるストラテジーは、世界が不確実な時にパフォーマンスが高く、別の戦略はマーケットが確実性に満ちてボラティリティが低い時にパフォーマンスが良く、あるいは両方の時にまずまずのパフォーマンスという戦略もある」

「前者の成功には運(Lucky)も関係する。数年の投資期間であれば運頼りもいいだろう。だが10年、30年といった単位でみれば、そういうわけにはいかない」

──主なファンドの今年のパフォーマンスは。

「今のところ良好だ。補足すると、われわれにとっての『良い年』とは、高いパフォーマンスをたたき出した年というより、想定通りのリスクを実現できた年。リターンはコントロールできないが、リスクはコントロールが可能だからだ。われわれはまず目標ボラティリティを設定する。全体のポートフォリオの目標ボラティリティは6%だ。その目標を持つと、事後的にリターンを見れば、平均して5%程度になる。年によっては15%もあれば、マイナス10%以上ということもあるが、大半が2─8%のレンジ内におさまる。当社では、全体のポートフォリオのリスクをターゲットである6%にできた年が良い年という認識だ」

──米VIX指数をはじめとする、最近の市場のインプライド・ボラティリティ低下をどう見るか。一部には御社にもあるショート・ボラティリティ戦略の人気なども一因ではとみる向きもある。

「それは無いだろう。当社が持つその類の戦略運用の預かり資産はせいぜい30億ドル、競合する最大手でも250億ドル。同業が運用するのは2000億ドル、ヘッジファンド業界全体では2兆ドルという規模感だ。オルタナティブ・ベータにはまだ成長余地が大いにあるが、そういった戦略が全体市場に影響を与えるには今より相当規模が大きくなる必要がある」

「むしろ、世界の株式相場、とりわけ米株相場が、長期にわたって安定したペースで上がり続けていることがボラティリティ低下の原因だと思う。実現ボラティリティが下がったことに伴い、インプライド・ボラティリティが低下したとみている」

「このトレンドが続くかどうか、私にはわからない。この先トレンドが転換すれば、当社のショート・ボラティリティ戦略には無論影響があるが、当社が有する大半の戦略には関係ないことでもあり、さしたる関心は持っていない」

(インタビュアー:植竹 知子、佐野 日出之)

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