ECB、緩和縮小を待ち過ぎるべきではない=クーレ専務理事
[フランクフルト 18日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のクーレ専務理事は、インフレの回復が確認されれば、緩和縮小をあまり長く待つべきではないとの認識を示した上で、必要であれば早期の利上げも理論的には可能と語った。
ロイターとのインタビューで述べた。
ユーロ圏ではインフレ率が現在2%をわずかに下回る水準で、成長率も回復を続けている。こうした中、ECBはドイツから2兆3000億ユーロ規模の債券購入プログラムを縮小し、現在マイナスの政策金利を引き上げるよう圧力を受けている。
クーレ氏は「金融政策において漸進主義が行き過ぎれば、やがて決定が行われる時の市場調整がより大きくなるリスクが出る」と述べた。
また、ECBが政策決定にあたり、選挙などの政治イベントをあまり重視すべきではないとも指摘。ドイツで今年9月に、またイタリアでは来年5月までに実施される総選挙を踏まえた発言とみられる。
クーレ氏は超緩和政策やフォワードガイダンスを擁護する一方で、債券購入終了前の利上げについて少なくとも理論的には可能だと発言。これは時間をかけて政策を正常化すべきとするコンスタンシオ副総裁やプラート専務理事の意見からの決別とも言える。
次回のECB理事会は6月8日に予定されているが、大きな政策変更は予想されていない。
<「変更不能ではない」>
クーレ氏は、政策決定者がまだ確信を持てないのは、インフレ回復が確かで金融政策での支援をやめても持続できるかという点だと強調。
ECBは現時点で債券購入は年末まで、また超低金利政策はそれ以降も続くと想定しているが、ECBの政策方針については「変更不能ではない」とし、「とりわけ、現在のような超低金利やマイナス金利を続けるコストと利点の問題だろう」と説明する。
クーレ氏は、こうした手段のメリットは今のところ、欠点より勝っていると言うが、マイナスの預金金利が銀行業界にコストとなり、金融政策の障害になり得るという強力な証拠があれば、それは問題になりかねないとも述べた。
ECBの政策メッセージでは、金利をさらに引き下げる用意があるとの立場を取っているものの、金融市場はもはやそうした想定はしておらず、来年3月には小幅の利上げも見込んでいる。
クーレ氏は「デフレリスクがもはやテーブルの外にあるのは明らかで、それは金融市場も認めている」とした上で、「われわれのフォワードガイダンスを事実と一致させるということが重要な考えだ」と語った。
<ECBのギリシャ国債買い入れ、実現にいくつか要件>
クーレ専務理事はECBが資産買い入れプログラムの対象にギリシャ国債を加える可能性について、検討を始める前に債務負担軽減など解決すべき問題が残っていると指摘した。ロイターのインタビューで述べた。
ユーロ圏各国はギリシャの債務負担を軽減する具体的な措置で合意する必要があるほか、国際通貨基金(IMF)は救済策に参加するかどうか理事会で決定しなければならないと指摘した。
「欧州安定メカニズム(ESM)とIMFの理事会が決定を下す前にECB理事会で(資産買い入れプログラムへの)追加について検討が始まるとは思わない」と述べ、ギリシャ国債がECBの買い入れ対象となるまでに数カ月かかる可能性があることを示唆した。
ユーロ圏は22日の財務相会合でギリシャの債務軽減措置について協議するが、合意に至るかどうかは不透明な状況だ。
クーレ氏は「22日は政治的判断を下す日になる」との認識を示し、「ECBとしては債務軽減措置の明確な内容と、ギリシャ債務の持続性への影響が知りたい。具体的な措置が必要だ」と語った。
また「IMFが正式に支援に加わる必要はないが、参加すれば債務軽減策の信頼性に関して安心感が増す」との見解を示した。
*内容を追加しました。
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