インタビュー:米利上げでも、円安進まない可能性=渡辺元財務官

2017年3月2日(木)21時05分

[東京 2日 ロイター] - 元財務官の渡辺博史・国際通貨研究所理事長は2日、ロイターとのインタビューに応じ、米国の利上げが年内最低2回は見込まれるものの、トランプ米大統領がドル高回避の意向であれば、円安方向に進まない可能性があると指摘した。

日米の長期金利差が4%ポイント程度に拡大すれば、日本は低利資金供給源として海外から批判され得るとし、その場合は日銀が金利目標を引き上げるとの見解を示した。

また、17─18日に予定されているG20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議で、為替を巡る文言が変更される可能性は少ないとの見通しを示した。

渡辺氏は、米連邦準備理事会(FRB)による利上げが「年前半に1度、後半に1度で最低2回はある」とみる。

一方、日銀は長期金利をゼロ%程度に抑える「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」を続けており、日米金利差拡大は円安要因。

しかし、「トランプ大統領が、口先ならぬ(ツイッターを利用した)指先介入(で円安をけん制)すれば、円安が進まない可能性もある」と警告した。

4月から始まる日米経済対話について、渡辺氏は「かつての日独機関車論のように日本が財政出動を求められる可能性はある」と予想した。

一方、金融政策では、先進国はどこも大規模な緩和を進めており「怒られる筋合いはない」と指摘。米利上げに連動し、日銀が利上げなどの金融引き締め方向に動くよう米国から求められる可能性は小さいとの見方を示した。

ただ、世界中の金利が上がり始めたときに、日銀が長期金利をゼロ%程度に抑える政策を続ければ、(現在約2%台の)日米金利差が一段と拡大する可能性に言及。

仮に日米の長期金利差が4%程度に拡大した場合、日本がキャリートレードの資金供給源として着目され、マネーフローの逆回転時に市場混乱の原因を作ったとして、海外から批判される懸念があるとの見解を明らかにした。

その上で日本の長期金利が0.5%や1%程度に上がっても、日銀が金融を引き締めたとは言われないと述べ、米国など海外金利の上昇に合わせ、日銀が緩やかに長期金利目標を引き上げるのが自然と述べた。

ドイツのバーデンバーデンで今月17日から開催予定のG20財務相・中銀総裁会合では、急激な変動の際には為替介入を認めた現行の声明文言の取り扱いが注目されている。

この点について渡辺氏は「トランプ大統領がG20を好きとは思えない」と述べるとともに「為替文言を死守したいのは日本だけ」と指摘。トランプ政権の意向から、文言が変更される可能性は少ないとの見方を示した。

*見出しを修正しました。

(竹本能文、木原麗花 編集:田巻一彦)

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