ECB、債券購入を来年4月以降月額600億ユーロに縮小 17年末まで継続
[フランクフルト 8日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は8日に開いた理事会で、現在月額800億ユーロとしている債券買い入れの規模を来年4月から月額600億ユーロに縮小することを決定した。来年3月末までは現行のペースを維持する。
買い入れは2017年末まで、もしくは必要に応じてそれ以降も継続するとした。
ただECBは声明で「見通しが悪化したり、金融情勢がインフレの道筋の持続的な調整に向けた一段の進展に整合しないものになった場合、理事会は買い入れプログラムの規模拡大、もしくは買い入れ期間の延長を決定する」とし、将来的に買い入れ規模を再び拡大する道も残した。
買い入れ規模の縮小はドイツやオランダなどの保守的な加盟国に譲歩したものと見られるが、ECBはユーロ圏周辺国などに配慮し、基調的なメッセージはハト派的だったと見方が出ている。
市場ではECBは月額800億ユーロのペースは維持しながら買い入れ期間を6カ月延長するのではないかとの見方が出ていたため、今回の決定は予想外だった。
<テーパリングは協議せず>
ただドラギ総裁は理事会後の記者会見で、資産買い入れの規模変更は金融緩和の縮小を示唆しているわけではないと言明。減額は市場におけるECBの持続的なプレゼンスを確保するためと説明し、今回の理事会でテーパリング(買い入れ縮小)については協議しなかったことを明確に示した。
同総裁は今回の決定を「実用主義的」で「柔軟」なものと表現。「(買い入れペースを)月額800億ユーロに戻すことも可能で、数多くの選択肢が存在する」とし、「テーパリングは視野に入っていないこと、ECBは市場にとどまり市場価格に圧力をかけ続けることを示すことが主要なメッセージとなる」と述べた。
そのうえで、「あらゆるところで先行き不透明性が見られている」とし、このためにECBは声明で買い入れ規模が将来的に拡大されることもあるとの姿勢を示したと説明した。
シンクマーケッツの首席市場アナリスト、ナエーム・アスラム氏は「ECBが量的緩和策を来年12月末まで延長したことは市場の予想を超えるものだった」と指摘。「ただECBは4月からの買い入れ規模の縮小も決定したため、今回の決定はハト派的な手法を用いたテーパリングだったといえる」と述べた。
ECBの決定を受け、ユーロは3週間ぶりの高値に上昇。ただその後は下落に転じた。ユーロ圏国債利回りも一時上昇したが、その後上げ幅は縮小している。
<ハト派とタカ派のせめぎ合い>
ユーロ圏ではフランス、ドイツ、オランダで選挙が控えているほか、イタリアでも総選挙が実施される可能性が高まっている。これらの国すべてで大衆主義的な動きが高まっていることもあり、ECBは緩和縮小に動くのが困難になっているのが実情だ。
ただドイツがECBの過去に例を見ない緩和策に反対する姿勢を強めるなか、ECBは量的緩和は永続的なものではないことを示す圧力にさらされていた。
ECBは将来的な買い入れ拡大も可能にするため、買い入れ対象とする債券を拡大。償還期限1─2年の債券のほか、利回りが中銀預金金利(マイナス0.40%)を下回る債券も必要に応じて買い入れるとした。
一方、ECBへの出資割合(キャピタル・キー)に応じて買い入れを行うとの規定は緩和しなかった。同規定の緩和には独連銀が反対しており、ドイツを初めとする保守的なユーロ加盟国の主張が受け入れられた格好だ。
HSBCのエコノミスト、サイモン・ウェルズ氏は、ECBは買い入れペースを縮小する一方で、期間を延長することで意外感を与えたと指摘。ECBは条件付きながらもテーパリングを決定したことで、緩和的な政策に対する批判をかわすと同時に、2017年中に更なる期間延長を決定するかどうかの困難な議論に向け時間を稼いだとの考えを示した。
<インフレ見通し>
ECBこの日に公表した スタッフ予想で今年のインフレ率の見通しを0.2%とし、9月に示した予想を据え置いた。2017年は1.3%とし、前回予想の1.2%からやや上方修正したものの、2018年は1.5%にやや下方修正。今回初めて示した2019年の予想は1.7%とし、2%近辺とするECBの目標は2019年になっても達成できないとの見通しを示した。
ドラギ総裁は記者会見で、スタッフ予想で2019年のインフレ見通しを1.7%としたことは2%をやや下回るとするECBの目標達成を意味するかとの質問に対し、「意味しない」と回答した。
ECBは主要政策金利であるリファイナンス金利を0.00%に据え置くことを決定。上限金利の限界貸出金利と下限金利の中銀預金金利も、それぞれ0.25%、マイナス0.40%に据え置いた。据え置きは予想通りだった。
*内容を追加しました。
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