ECBがイタリア国債買い支え用意、市場混乱に対応=関係筋

2016年11月30日(水)03時10分

[フランクフルト 29日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は、12月4日に実施される改憲の是非を問うイタリアの国民投票を受けて同国の借り入れコストが急上昇した場合、短期的にイタリア国債を買い支える構えだ。ユーロ圏の中銀筋4人が明らかにした。

改憲を推進するレンツィ伊首相は国民投票に自らの進退をかけており、否決された場合の政局混迷を懸念し、足元ではイタリアの国債や銀行株が売られる展開となっている。

市場が混乱した場合、ECBは月額800億ユーロの資産買い入れ策を通じてイタリア国債を支援することが可能だと関係筋は指摘する。

買い入れ策は十分な柔軟性を備えているため、一時的に買い入れ額が増えても許容範囲だとしている。

中銀筋の1人は「理事会はイタリアを支援する余地があることを理解しており、必要ならこれを活用する。資産買い入れ策は柔軟性を持って設計されている」とした。

ただ一方で、これは市場のボラティリティーに対応するための、数日、または数週間単位の時限措置とも強調。なぜなら資産買い入れはユーロ圏のインフレ押し上げと景気支援が目的で、特定の国で起こった危機への対応策ではないからだとした。

ECBはコメントを控えた。

イタリア10年債利回りは2%程度と、およそ1年ぶりの高水準にあるが、ユーロ圏の債務危機が深刻化していた2010─11年時の7%の水準は大きく下回る。

コンスタンシオECB副総裁もイタリア国債利回りはなお低水準で、ユーロ圏離脱のリスクを投資家は織り込んでいないと指摘する。

そのため、イタリア政府にとり国民投票後の最大の懸念材料は、巨額の不良債権を抱える国内銀行の健全性だろう。

だが中銀筋は、イタリア政府が銀行救済策を申請しない限り、ECBに銀行を支援できる余地はほとんどないと話す。

仮にイタリア政府が支援を申請すれば、ECBは国債買い入れプログラム(OMT)を通じて特定の国の国債を買い支えることが可能になる。OMTは現在実施している資産買い入れとは異なり、ECBへの出資比率に応じて買い入れる「キャピタル・キー」規定がない。

ただ、救済プログラムでは民間投資家に損失を負担させる「ベイルイン」規定があるため、イタリア政府にとっては受け入れ難い選択肢だ。

*内容を追加して再送します。

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