アングル:「カローラ」50年目の正念場、購入層若返りへ活路開けるか
[東京 5日 ロイター] - トヨタ自動車の「カローラ」発売から50周年。日本の高度成長期から大衆車の代名詞であり、世界ではなお同社のベストセラー車で、海外での人気も根強い。しかし国内では購入層が高齢化し、ブランド存続を懸念する声も出ている。
若者の心をつかむ車として新たな活路を開けるかどうか。生き残りへの正念場を迎えている。
<セダン購入者平均年齢は70歳近く>
カローラは1966年11月5日の発売以来、世界累計販売が約4400万台と最も売れているトヨタ車だ。昨年はトヨタ単体の販売台数の約15%を占めた。国内では2001年まで33年連続で年間販売首位、「50歳」になった今もトップ10入りの常連だ。昨年の国内販売は前年比4.6%減の10万9027台と、ピークだった73年の約4分の1にとどまるが、4位に食い込んだ。
カローラの将来に向けた悩みの一つが、顧客の高齢化だ。シリーズ販売台数の約40%を構成するセダンでは、現行モデル11代目の購入者の平均年齢は69歳。カローラを何台も買い替え、長く乗り継いできた顧客が多い。
カローラには乗り心地や操作性、維持費などあらゆる面で80点以上の顧客満足度を確保し、90点以上もいくつかある「80点主義+アルファ」という開発理念がある。この理念を具現化し続けてきた完成度の高い車だ。
しかし、高度経済成長とともに豊かさを実感したサラリーマンたちが自分にも手が届く車としてカローラを買った時代はすでに去った。トヨタカローラ徳島(徳島県)の北島義貴会長は、これからも手ごろな価格で安全・環境装備が充実した車として存在感を示し続け、「今よりも若いユーザーが求める車にしてほしい」と切望する。
<薄れる存在感>
これまでも購入層の若返りに努めてきた。00年に投入したワゴンタイプの「フィールダー」は若い子育て世代に評価され、CMにアイドルの木村拓哉さんも起用。20―30代の顧客も増え、今ではシリーズ全体の販売台数の60%以上を占める。
ただ「カローラというブランド自体を知らない若者もまだ多い」と、次期モデル12代目の開発責任者、小西良樹氏は危機感を募らせる。12代目は品質や性能はもちろん、「デザインも若者好みのかっこいい車を目指したい」と意欲を見せる。
とはいえ50年も生きれば勢いは落ち、その印象も薄れつつある。02年にホンダの小型車「フィット」に連続年間販売首位のストップをかけられ、その後5年は奪還するも、08年には再びフィットに、09―12年はハイブリッド車(HV)「プリウス」に首位を奪われた。ここ数年はプリウスと11年登場のHV「アクア」との身内2車種に後塵を拝す状況が続いている。
小西氏は「カローラには技術を大衆化する役割もある」と、大衆車の看板は譲らない覚悟だ。歴代開発責任者も「自動運転、燃料電池など時代に応じて進化する新技術を常に先取りし、大衆車として広めてほしい」(10、11代目担当の藤田博也氏)との思いを寄せる。
<「持つ喜び」のある車に>
「カローラのような大衆車が活躍する時代は長くは続かないかもしれない」――。名車フェラーリなどのデザインを手がけ、最近では新幹線などの鉄道にも取り組む工業デザイナーの奥山清行氏は近い将来をこう予想する。
IT企業の巨人グーグル
10、11代目の開発を担当したトヨタの安井慎二常務理事は、カローラをライドシェアの車として使ってもらうことも「あるかもしれない」という。また、法人向け販売という収益源もある。だが「それだけでは生き残れない。持つ喜びを感じてもらう車としても提供しなければいけない」と強調する。
<DNAにこだわらず>
海外での悩みもある。カローラはトヨタ車で最も海外での現地化が進んでおり、世界16拠点で生産。154カ国・地域で販売され、昨年の販売台数約134万台のうち9割以上が海外だ。ただ、仕様や売り出し方は世界共通ではない。中国では中間層向けファミリー車、ブラジルやタイでは富裕層向け高級車などと狙いが異なる。いかに量販車としての効率も追求しつつ、現地の多種多様なニーズに応えるかが課題だ。
「DNAにこだわる必要はない」。現トヨタ顧問で2、3代目を担当した佐々木紫郎氏は言う。大衆車として成長したカローラが次の50年の歴史を作るには、これまで追求してきた「チャレンジ精神」を通して、新たな基軸を打ち出す必要がありそうだ。
*本文中の表現を修正しました。
(白木真紀 編集:北松克朗)
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