焦点:長期金利急上昇、日銀緩和の限界意識 プラス圏浮上の声も
[東京 2日 ロイター] - 日本国債の利回りが急速に上昇(価格は急落)している。日銀がマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)の効果を総括的に検証する方針を29日に公表し、3次元緩和の限界が意識され、市場の一部では国債買い入れ減額への警戒感さえ浮上した。
日銀緩和に依存してきた反動との見方もあるが、政策の先行き不透明感が残ったままでは、10年最長期国債利回り
<10年債入札が金利上昇に拍車>
金利が急上昇する中で行われた2日の10年債入札。警戒感が強まる一方で「先物は前週の高値から短期間で2円以上も調整しており、自律反発しても不思議ではない」(証券)との声も市場で少なからずあった。
しかし、結果は予想を超える不調。好不調の判断材料となる平均落札価格と最低落札価格の開き(テール)は、27銭と2015年3月以来の大きさとなった。
連日の急落相場で損失を被った業者(証券会社)のリスク許容度が、大きく低下しているのではないか──。複数の債券市場関係者はそう指摘する。実際に証券会社からは「実需で確実に落とさないといけない金額を除くと、できるだけ低い価格に流して応札せざるを得なかった」(証券)との声が漏れてきた。
入札結果を受けて金利上昇は加速。10年債は前日比11.5bp高いマイナス0.025%とゼロ%に急接近。5年債は同11bp高いマイナス0.120%、2年債は同9bp高いマイナス0.150%といずれも約4カ月半ぶりの水準を付けた。「一部参加者から中期ゾーンに投げ売りが出たことも、地合いを悪化させた」(同)という。
<過剰な織り込みの反動も>
しかし、円債市場が自らが招いた金利急騰とも言える。マイナス金利付きQQEの下で、円債市場は金利低下や追加緩和を過剰に織り込んできた。
7月28日に行われた2年債入札。平均落札利回りはマイナス0.3610%と過去最低を更新した。マイナス金利政策の深掘りを織り込まないと正当化できない水準だ。
さらに落札不明額が約1.4兆円と発行額(約2.3兆円)の6割を超えた。非公表としている外資系数社分を考慮しても説明できない金額で、日銀追加緩和を見込んで「一部参加者が、かなりの額を落札したのではないか」(国内金融機関)との観測が絶えない。
しかし、日銀は7月29日の決定会合で上場投資信託(ETF)の買い入れ増を決めたものの、一部で予想された国債買い入れ増やマイナス金利幅拡大を見送った。マイナス金利幅拡大を「前提」にしていた一部参加者は、ハシゴを外された格好となった。
日銀は、今年9月に異次元緩和の下での経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行う方針を表明。黒田東彦総裁は定例記者会見で、今後も必要な場合に3次元で追加措置を講じる姿勢を示したが、市場では限界説も根強い。SBI証券のチーフ債券ストラテジスト、道家映二氏は「量と金利の限界を露呈した」との見方を示す。
黒田総裁は2日午後の麻生太郎・副総理兼財務相との会談後、記者団の質問に答え、この日の金利上昇の背景に緩和縮小観測があったのではないかとの質問に、政策効果の検証によって、そういうことにはならないとの見解を示した。
しかし、円債現物市場での反応は限定的だった。
<9月日銀会合までは不安定相場か>
短期的な相場急落後だけに、市場では自律反発をうかがう展開を想定する声もあるが、少なくとも次回(9月20─21日)の日銀決定会合まで金融政策の不透明感がくすぶり続けるとみられている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、稲留克俊氏は、この日の市場変動について「緩和限界論が他市場に比べて強く意識されている債券市場は、総括的検証の表明でフレームワーク修正の思惑が出てきても不思議ではない。国債買い入れの減額やマイナス金利政策の見直し等、引き締め方向の政策を織り込む動き」とみる。
12日には30年債入札を控えており、「短期的にはボラティリティーが高い相場展開」(みずほ証券・マーケットアナリストの辻宏樹氏)となりそうだ。長期金利はプラス水準への再浮上も視野に入ってきたとの声が、市場関係者の中で広がっている。
(星裕康 編集:伊賀大記)
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