インタビュー:資源分野利益を20年に3倍へ、投資継続=三井物産社長
[東京 1日 ロイター] - 三井物産の安永竜夫社長は1日、ロイターとのインタビューで、2016年3月期に大幅な減損損失を計上した資源分野について、収益性など投資のハードルを上げつつも縮小はせず、今後も強化していく方針を示した。これにより、2020年に同分野の利益を2000億円まで回復させたい意向だ。
同社は前期に資源関連で2300億円の減損損失を計上。最終損益は834億円の損失と、創業以来の赤字に転落した。こうした状況を受け、同様に赤字に転落した三菱商事は商品市況に左右されない体質への転換を目指し、今後3年間は資源分野の資産残高を増やさない方針を打ち出している。
安永社長は回復への道筋について「強いところを徹底的に強くしていく」と説明。同社の強みは資源エネルギーにあるとして「いまの市況でも十分に利益が出るものをしっかりやっていく」と述べ、今後も同分野を強化していく方針を示した。
原油と鉄鉱石については「市況は底を打ったと思っているが、上値が重い状態は今後も続く」とみており、「コンサバティブな市況予測をベースにしてもペイすることを確認した上で、ハードルを少し上げても収益性のあるものを厳選してやっていく」と強調した。
こうした取り組みにより、「チャレンジングではあるが、2020年には市況の回復と併せて資源で2000億円、非資源で2000億円の利益を目指していきたい」と意欲を示した。
同社は今期、最終利益2000億円を計画しており、このうち資源分野は600億円、非資源分野は1400億円を見込んでいる。
資源分野に関しては「生産減によりサプライサイドが締まってきている中で、次の投資案件が出てくるタイミングでもある」と指摘。「市況回復のみではなく、いまだからこそ手に入れられる権益もしっかりやっていく」と述べ、2020年に資源分野の資産は「大きくなっているイメージだ」との見通しを示した。
過去最高の最終利益4344億円を計上した2012年3月期には、エネルギーと金属の資源分野で全体の9割にあたる3894億円を稼ぎ出した。それに比べると2000億円はまだほど遠い水準にあるが、収益性の高い資産を積み増すことで、長期的な競争力を高めていく。
一方、非資源分野については「ハイドロカーボン(炭化水素)の下流を含む素材分野、インフラ、モビリティー、ヘルスケアを中心に、市況の変動にさらされにくい収益基盤を作り上げていく」と説明した。
総合商社のビジネスモデルは時代とともに変化しており、資源価格が低迷する中で、現在もまた岐路に立たされている。そうした中、一部では総合商社の合併可能性もささやかれている。安永社長は「個別領域ごとに意味があるものがあればやる」としながらも、会社同士の合併については「おそらくシナジーが出ない」と述べ、否定的な考えを示した。
英国の欧州連合(EU)離脱決定の影響に関しては「基本的にはロンドンの優位性は揺るがないと思っている」とした上で、万が一その状況が崩れれば、「事業分野ごとに(拠点をロンドンから)動かすことも必要」と述べ、状況次第では体制を見直す可能性を示唆した。
ロンドンの現地法人は欧州やアフリカ、中東地域を管轄しており、この地域の中核的な役割を担っている。
*写真を差し替えて再送しました。
(大林優香 志田義寧)
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