日銀は「緩和カード」温存、東京でドル一時103円台に突入

2016年6月16日(木)20時45分

[東京 16日 ロイター] - 日銀は15━16日に開いた金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送り、政策の現状維持を決めた。このため為替市場では一時ドル/円103円台と2014年8月以来1年10カ月ぶりの水準まで円高が進んだ。

英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票を控え不測の市場混乱に備え貴重な緩和カードを温存した格好だ。しかし米国の利上げ観測後退で円高トレンドがさらに明確になれば、日銀の政策効果にも疑問符がつきかねず、厳しい局面となりつつある。

会合では、年間80兆円の資産買い入れと当座預金の一部にマイナス0.1%のマイナス金利を付与する政策の現状維持を賛成多数で決めた。消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)が2カ月連続で前年比マイナス0.3%にとどまったのを受け、目先数カ月の物価見通しを「小幅のマイナスないしゼロ%程度で推移するとみられる」に下方修正した。

市場では、「英国国民投票を前に、残り少ない緩和カードを切ることに慎重な面があったのではないか」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏)とみられた。

黒田東彦総裁は、記者会見で英国の国民投票について「英国など海外の中央銀行と緊密に意見交換しており、日本および世界経済に与える影響は十分注視したい」と述べた。

為替についても「経済の基礎的条件を反映しない円高や変動率の増加は好ましくないと思っている」と述べ、「為替は経済全体に影響を与える」と指摘。急激な円高が経済や物価に悪影響を与えるならば追加緩和に踏み切る姿勢を示した。

しかし、日銀をめぐる環境は厳しさを増している。円高圧力が日増しに強まるなかで、有効な政策手段も乏しくなりつつあるためだ。4月の日米財務相会談では年初来の急激な円高進行について日米が対立。15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも早期利上げに対する慎重姿勢が明らかになり、安倍政権発足以来の円安トレンドは明確に円高方向に転換しつつある。

円高トレンド阻止が強く念頭にあったとされるマイナス金利の導入も、これまでのところ不動産市況を刺激するばかりで、為替円安効果は測定が難しい。

一方、マイナス金利は金融機関の収益悪化など副作用が幅広く意識されている。自民党は参院選公約から金融政策に関する文言を削除。民進党は「マイナス金利撤回」と公約に掲げた。総裁は与野党公約について質問されたがコメントを控えた。

*見出しを修正しました。

(竹本能文、伊藤純夫 編集:吉瀬邦彦)

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