インタビュー:日本株の投資判断2段階引き下げ=蘭NNIP

2016年4月8日(金)17時26分

[東京 8日 ロイター] - オランダの保険・資産運用会社大手NNインベストメント・パートナーズ(NNIP)が日本株の投資スタンスを、先月下旬に「アンダーウエート」へと引き下げたことがわかった。同社のハンス・ストーター最高投資責任者(CIO)が、ロイターとのインタビューで明らかにした。

安倍晋三政権誕生直後の2013年初めから「オーバーウエート」を維持してきたが、短期的に円高が企業収益を下押しするリスクがあるとみている。

NNIPは、世界的な金融コングロマリットINGグループから分離・独立したNNグループの資産運用部門で、本拠地はハーグ。2015年末の運用資産残高(AUM)は1870億ユーロ(約23兆円)。

ストーター氏の来日インタビューの概要は以下の通り。

──年初来、世界的に金融市場が混乱するなか、運用方針に変更は。

「株式については、米利上げ期待の後退を背景としたドル安傾向で恩恵を受ける米国とエマージング(新興国)を選好(オーバーウエート)、欧州と日本は慎重な見方(アンダーウエート)をしている。これはあくまで短期的な戦術変更だが、日欧は自国通貨高が企業収益を下押しするリスクがあるため、投資スタンスを引き下げた」

「当社は2013年初めから日本をオーバーウエートしてきたが、米利上げ軌道が相当に緩やかなものとなるとの見通しが強まったことから、数週間前(3月下旬)に投資判断を引き下げた。基調がドル安、すなわち円高となるならば、それは日本企業にとっては収益下押しの要因となる」

──海外勢の日本株売り越し額は今年に入って約5兆円に上り、アベノミクス相場をけん引してきた外国人投資家が日本株売りに転じた。

「日本株ロング戦略は、ここまで(過去3年間の)コンセンサストレードだった。アベノミクスを理由に、誰もが日本株をロング(買い)してきた。しかしコンセンサストレードには必ず終わりが来るものだ」

「投資家として、アベノミクスの資産価格押し上げ効果に満足している。アベノミクスは壮大かつ類のない実験であり、その成否を判断するのは時期尚早だ」

「日銀の緩和政策がFRB(米連邦準備理事会)やECB(欧州中央銀行)より長く持ちこたえることができれば、成功する見込みは十分あるだろう。ただ仮にアベノミクスが失敗に終われば、日本は『失われた20年』に逆戻りすることとなり、非常に困難な状況に陥るだろう」

──投資スタンスを再び変更し、日本株買いに転じる可能性は。

「もちろんある。見通しが変化して米国がより力強い利上げサイクルに入るとなれば、円は再び下落基調となり、企業収益の上振れ期待から日本株の先行きにも強気が戻るだろう」

──リスクは。

「われわれのメーンシナリオではないが、世界的なリスクオフが強まることはリスクだ」

「またこれは日本株に限らないが、企業が余剰資金を生産性向上のための投資に使わず、配当や自社株買いに回すことが多くなっている状況を憂慮している。それは、長期的には懸念材料となると思う」

──債券に対する投資スタンスは。

「債券では、社債を最も選好(オーバーウエート)している。ハイイールドも悪くないが、ファンダメンタルズを考えると、投資適格債にはスプレッドが十分乗っており、最も魅力的といえる」

「地域別では、米国と欧州を選好する。米国は、歴史的に見てもスプレッドが十分ワイドだ。一方、欧州はスプレッドが米国と比べてタイトだが、ECBが社債の買い入れを始めることが重要だ。投資適格債に(ECBという)新たな需要のけん引役が加わることになる」

「続いて、ややトリッキーなハイイールド債だが、これにも積極投資していく。地域別では、米国では原油価格の長期低迷で関連セクターのデフォルトリスクが高まっているものの、全般的には割安感もあり、当社の調査力を活用すれば投資妙味は高いと判断している。一方、欧州については、米国ハイイールドの15%程度が(原油安で財務が悪化する)エネルギー、金属・鉱業関連であるのに対し、欧州ではその比率はほぼゼロであることから、まず欧州については安定しているといえる」

「その他、国債全般については慎重なスタンス(アンダーウエート)でいる」

(インタビュアー:植竹 知子 編集:伊賀 大記)

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