アングル:投機筋の円ロングが拡大、短期的にはドル/円の反発にも
[東京 7日 ロイター] - 投機筋の円買いが、急拡大している。ロングポジションだけをみれば過去2番目の大きさだ。リスク回避の円買いだけでなく、トレンドの変化を感じた投機筋が、ドル売り/円買いに動いたことが大きいとみられている。
短期的にはドル/円反発のエネルギーとなりそうだが、どこかの時点で再び円高に回帰するとの見方も根強い。
<過去2番目の円買い>
投機筋の動向を見る上で市場で注目されているのが、米商品先物取引委員会(CFTC)のまとめるIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組だ。
IMMはオプションなどの取引が含まれず、投機筋の取引全体の動向を映すわけではないが、市場動向を見る上で目安として意識する市場参加者は少なくない。ポジションが一方向に傾きを強めれば、調整のための反対売買が警戒される。
4日発表分(3月1日までの1週間)では、ネットでの円の買い越しは前週の5万2734枚から5万9625枚に増加し、2012年1月以来の高水準となった。
1986年以降のデータで買い越しが最大だったのは、2008年3月25日までの週で6万5920枚。今回の円買い越し規模は、過去5番目の大きさとなる。
さらに市場の関心を集めたのが、9万4070枚となった円ロング(買い持ち)ポジションの拡大だ。同じく08年3月4日までの週の9万4654枚に次いで、過去2番目の大きさに膨らんだ。これらのロングが巻き戻されれば、ドル/円のリバウンドに弾みがつく可能性がある。
年初からの下落で円売り越しが円買い越しに転換した局面でのドル/円は、118─119円付近を推移していた。仮に足元の円買い越しが解消して投機筋のポジションの傾きが解消に向かうなら「120円手前がひとつのターゲット」と、みずほ証券・チーフFXストラテジスト、鈴木健吾氏は指摘している。
<トレンド変化との見方も>
ただ、投機筋は、ドル/円のトレンド変化を敏感に感じ取っているとの見方もある。
ドル/円は他の通貨ペアに比べ、CTA(商品投資顧問業者)などを含むトレンドフォロワーが比較的多いとされる。過去3年以上にわたって右肩上がりだったトレンドは、2月前半の急速な円高の流れの中で、明確に下向きに変わった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券・チーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は、1年間トータルの損益水準を示す52週移動平均線がしっかり下方向を向き始めたことが、投機筋の行動にも影響を与えたのではないかとみる。
行き場を失ったマネーが、円買いに向ったとの見方も有力だ。英国のEU離脱問題を踏まえて、ポンドやユーロから円や金に資金が流れ込みやすくなっている面もある。ユーロ/円やポンド/円、豪ドル/円といったクロス円の下落は、ドル/円の下押しに作用した。
欧州では日銀に先立ってマイナス金利が採用されたが、これが銀行の信用不安を助長しかねないとの懸念が浮上。日銀がさらにマイナス金利の幅を拡大するのは困難との見方につながり、投機筋の円買いを強めた面があるともみられている。
野村証券・チーフ為替ストラテジスト、池田雄之輔氏は、ヘッジファンドなどの動向について「ドル買いはしたくないという雰囲気になっている」と話す。
マクロの米経済指標は改善を示してきているが「米追加利上げで株と原油がメルトダウンするとの不安心理が渦を巻いているうちは、なかなか日米金利差だけに着目してその通りにポジションを動かすというメンタルにならない」と、三菱UFJMS証の植野氏は指摘している。
(平田紀之 編集:田巻一彦)
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