アングル:ハイイールド債急落で米景気の強さに懸念
[ニューヨーク 14日 ロイター] - 指標となる高利回り社債の急落を受けて、投資家が考えるよりも米国経済は健全な状態ではないとの不安が広がっている。
実質的にジャンク債を集めた代表的なハイイールド債の指標とされる「iシェアーズiBOXX米ドル建てハイイールド・コーポレート・ファンド」は年初からの下落率を12%に広げた。競合する商品の「SPDRバークレイズ・ハイ・イールド・ボンドETF」も年初からマイナス13.4%となっている。
金融危機から7年を経た現在、大半をディストレス債に投資するファンドの一部が破綻した最近の出来事は、債券市場が先行きの株式市場と経済全体を襲う数々の問題の重要指標になるとみている投資家にかつての記憶を思い起こさせた。
アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏は「流動性に支えられしばらく続いてきた市場は、特に政策の誤りと、または市場のアクシデントの可能性の双方に対して特に脆弱だ」として、低金利を維持し債券の購入で債券市場を支えてきた米連邦準備理事会(FRB)の長年にわたる政策に言及。
その上で「金融政策の方向性の違いと」、一部のエネルギー比率の高い社債などの「市場セグメントにおける流動性の問題に鑑み、今日の投資家は両方を懸念している」と指摘する。
株式・債券市場の投資家の疑問は、ハイイールド債市場の不振がより経済全体の落ち込みの前兆なのかどうかだ。
欧州やその他の国々の金融政策は全般的に緩和的なのに対し、米国のFRBは労働市場に健全性の兆しがみられるとして、16日に引き締めサイクルを開始する見通しだ。
指標となるS&P500種指数は史上最高値の終値からわずか5%低い水準にすぎず、投資適格社債の発行は依然として高水準となっていることから、FRBの利上げは景気に対する新たな信任投票ともみることができる。
FRBの対応と米国市場の反応は大きく誤っているのだろうか。高利回り債をウォッチしているファンドマネージャーとアナリストは、その可能性があるとみている。
フィッチ・レーティングスによると、最低15億ドルのハイイールド債のデフォルトは少なくとも13カ月連続で続いており、2008─09年の金融危機のピークにみられた記録にわずか1カ月と迫っている。
一部の社債投資家が必要とする利回りと、彼らがリスクフリー資産に求める利回りの相対的な格差、すなわちスプレッドは当時と同じほどに広がっている。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのハイイールド・マスター指数によると、14日の市場で比較可能な国債とジャンク債の間の平均スプレッドは7.10%ポイントで、2012年6月以降で最もワイド化した。11日の幅広い相場の急落により、ハイイールド債のスプレッドは一日としては2011年8月以来となる大幅な拡大だった。
「2016年に景気後退に陥る可能性のある領域に入った。特に中西部の複数州における地域においてだ」と、ヘネシー・ファンズのポートフォリオマネジャー、ブライアン・ピーリー氏は指摘する。同氏は「原油価格の調整の中のある時点で、消費者に対する原油安のメリットが労働市場における雇用の喪失に代わる」とみている。
先週はサード・アベニュー・マネジメントが7億8900万ドルのファンドを償還停止し、清算する方針を発表した。ディストレス債を専門に扱い、13億ドルを運用するストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズも後にファンドの一部の償還を停止した。ルシダス・キャピタル・パートナーズもファンドを清算し、来月に9億ドル相当の運用資産を顧客に返還する計画だ。
ファンドの破綻や流動性状況を超越して市場で実勢価格に基づき容易に売買が行われる能力は、一年のうちで今ごろに損なわれることが多い。
さらに、オッペンハイマーファンズのクリシュナ・メマニ最高投資責任者(CIO)によると、エネルギー価格の下落の度合いは大半の投資家が予想したより大きく、米国の製造業から新興国のコモディティ輸出企業に至るまで圧力が加わっている。
メマニ氏は「実際に市場で最悪のリスクは、FRBの金融引き締めやドル高、そしてクレジットスプレッドのワイド化を原因とする米好景気の減速だ。米国経済にはふらついている部分がかなりある」と指摘した。
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