アングル:中国でマツダがライバル凌駕、消費者のし好変化が追い風

2015年7月17日(金)13時01分

[南京(中国) 17日 ロイター] - 中国市場全体の自動車販売が今年さえないなか、消費者の嗜好の変化を追い風に、ライバルを凌駕しているのがマツダだ。マツダは自社の販売記録を塗り替えており、需要増に追いつくのに苦労している。

マツダのスポーティなデザインは、伝統的なブランドにとらわれず、自分の趣味に従った購入行動をとる新しい層の心をとらえている。

マツダのSUV「CX─5」を昨年購入した南京市の27歳の会社員は「他社のデザインは丸みを帯びていたり、ずんぐりしたりしているが、『CX─5』は流れるような優美な車体」と絶賛した。

中国の自動車販売台数は15年上半期は1.4%増で、6年ぶりの低い伸びにとどまった。業界団体は先週、株式市場の急落を受けて、経済の先行きに対する消費者の懸念が一段と強まったとの見方を示した。

半面、マツダは17%増と、同社の上半期の伸び率としては過去最高を記録。「CX─5」のほか、セダンの「アクセラ」「アテンザ」が好調だった。マツダの広報担当者は、ロイターに対して、需要があまりにも強いため、一部モデルの供給が間に合わない状況と話している。

しかし、マツダの市場シェアはなお1%にも満たず、月間の販売台数も、フォルクスワーゲン(VW)などライバル各社のごく一部。VWは過去30年をかけて約20%という現在のシェアを築いてきたが、マツダが中国に本格進出したのは2007年とごく最近だ。

<ドイツ神話に陰り>

アナリストは、自動車について経験を積んだ中国の消費者の間では、ドイツ車が常に優れているという「ドイツ神話」が陰りつつある。

調査会社オートモーティブ・フォーサイトを率いるエール・チャン氏によると、中国で影響力を持つテレビの消費番組がVWの品質やサービスを批判したことも、ドイツ車離れの一因になっているという。

こうした中国自動車市場の変化にうまく食い込んだのがマツダだ。マツダは、スリムさやスポーティさを前面に押し出した「KODO(魂動)」というデザインコンセプトを引っさげ、勢力を拡大しつつある。

マツダの中国合弁会社2社のうちの1社である、長安マツダ汽車の松尾則宏社長は先週、南京で行われたグループインタビューの中で、市場が成熟するにつれ、消費者は伝統的なブランドにこだわるのではなく、デザインやユニークさを重視して自動車を選ぶようになると話す。

これは、マツダがターゲットにしている方向と一致するという。

<価格競争から距離>

上半期の販売台数は急増したが、マツダは通年目標を4.3%増の22万台に据え置いている。マツダの幹部らは、中国市場での戦略はブランドの構築であり、急速な拡大ではない、と繰り返し述べている。

中国でのマツダ車の価格はライバル各社と変わらない。例えば、「アクセラ」は11万5500元(1万8601.43ドル)から。米ゼネラル・モーターズ(GM)の「チェビー・クルーズ」は10万9900元だ。しかしマツダは、価格競争からは距離を置いている。

中国市場の鈍化を受けて、GMやVWは値下げを開始。ディーラーは在庫が増えるのを避けるため、大幅なディスカウントを行っている。

一方のマツダは値引きをしておらず、価格の安定を維持するため、ディーラーの在庫を注意深く監視しているという。松尾社長は、マツダは規模が小さいため、価格戦争に参加するわけにはいかないと話した。

(Kazunori Takada記者 翻訳:吉川彩 編集:吉瀬邦彦)

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