アングル:3度目の「日経2万円」、世界的に指標弱く慎重な見方も
[東京 19日 ロイター] - 日経平均が3度目の2万円台乗せを果たした。国内企業決算が出そろい、今期2ケタ増益への期待感が高まったことに加え、積極的な株主還元策が評価されているという。海外の中長期マネーに加え、投信を通じた個人資金も入っているとみられている。
ただ、世界的にマクロ経済は依然として弱く、海外金利動向も不安定で、先行きに慎重な声も少なくない。
<後場に海外年金の買い>
日経平均が2万円大台に乗せたのは、ザラバで4月10日、4月22日(28日まで)に続き3回目。終値では4月28日以来となる。
TOPIXも後場一段高となり、2007年11月以来、7年6カ月ぶりとなる高値を付けた。
市場では「後場から海外年金の買い」(三京証券マネージャーの藤井勝行氏)が観測され、足元の日本株の上昇を支えているとみられている。
海外投資家が評価しているのは堅調な国内企業業績だ。メリルリンチ日本証券・株式ストラテジストの阿部健児氏は「業績が伸び悩んでいる米企業に対し、国内企業は今期2ケタ増益が見込まれ、海外ロングオンリーからの評価が高まりやすい」と話す。
同証券が集計した12月─3月決算のTOPIX採用銘柄の2015年度会社計画(15日発表分まで)によると、経常利益予想は前期比10.4%増となった。阿部氏は、企業の保守的な姿勢や実勢より円高に想定されている為替レート、国内景気回復の後押しなどを考慮すると「実績も2ケタ増益になる可能性が高い」とみている。
また、株主還元に対する企業姿勢の変化も買い手掛かりとなっている。自社株買いなどを材料に前日に大幅高となった三菱UFJや第一生命はこの日利益確定売りが優勢だったものの、「6月に施行されるコーポレートガバナンスコードに合わせて、ROE(自己資本利益率)向上を目指す銘柄には、引き続き海外勢の買いが見込まれる」(外資系証券)との声が出ている。
海外勢の買いに加え、個人投資家による買い期待も大きい。18日に設定された野村アセットマネジメントの「野村日本企業価値向上オープン(円投資型)/(米ドル投資型)」は約679億円の資金を集めた。4月3日に設定された第1弾は、設定後に残高を2000億円超に膨らませ販売打ち切りになったとされており、今回も人気化が期待されている。
<欧米金利の動向を警戒>
ただ、ここからの大幅なアップサイドを見込む市場参加者は乏しい。国内企業決算というミクロ要因が一巡し、マクロ面に視点が移る中で、不透明な海外要因が日本株の重しになるとみられているためだ。
懸念されているのは欧米金利の動向。ドイツの10年国債利回り
ただ、一段の上昇を警戒する声は少なくない。「ドイツの金利上昇は、異常な債券価格まで買われた反動との見方もできるが、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を進める中で、金利が急上昇したことに対して警戒感はぬぐえない」とミョウジョウ・アセット・マネジメントCEOの菊池真氏は述べる。
加えて米景気に対する見方も日本株を左右する。足元の弱い米経済指標を受けた米金融政策の正常化先送りは、株価にプラスとの見方がある。
だが、日本株にとって「強い米経済を背景とする国内企業業績への寄与や、ドル高/円安の進行を通じた上昇がベストシナリオ」(準大手証券)と指摘され、米景気が弱いままでは、本格的な株価上昇に結び付きにくいとみられている。
そのため日経平均は2万円を挟んだレンジ相場を抜け切れないとの見方が大勢だ。マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は、目先の日本株について「日経平均が4月23日の年初来高値2万0252円に面合わせする場面がありそうだが、基本的には25日移動平均線(1万9797円94銭=19日)をサポートラインとしながら、2万円前後での値固めを想定している」と述べた。
(杉山容俊 編集:伊賀大記)
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