アングル:ドル強気派債券ファンドが方針転換、米利上げ先送りを懸念

2015年4月10日(金)17時15分

[ボストン 9日 ロイター] - 世界的な債券ファンドのうち幾つかのドル強気派が、ここ数週間で方針を転換した。これらのファンドは米連邦準備理事会(FRB)が利上げを先送りするのではないかとの懸念から、ドル資産比率を縮小しているのだ。

ファンドマネジャーやアナリストによると、方針転換の背景には、弱い米経済指標に加えて、欧州中央銀行(ECB)によるテコ入れで欧州の景気が持ち直してきていることで、12年ぶりの高値をつけたドルの上昇に息切れの気配が漂っていることがある。

グローバル債券ファンドのマネジャーは国ごとの経済パフォーマンスの差に注目している。彼ら自身の成績は各国中央銀行の動き次第ですぐに急変動しかねない。

こうした中でレッグ・メーソンBWグローバル・オポチュニティーズ債券ファンド(資産額39億ドル)のジャック・マッキンタイア氏は、ドルはこれまで米国と他の国の経済格差から多大な恩恵を受けたが、そうした構図が今後も続くとは考えにくいと指摘した。

マッキンタイア氏は、このファンドのドル資産比率を3月初めの43%から通貨ヘッジを外すことで37%まで下げたと説明。「ドルはごく短期間で未曾有の値動きを見せた。ドル高ペースは鈍化していかなければならない。現状は持続不可能だ。極めて大幅に、極めて急速に動いてしまった」と話した。

トムソン・ロイター傘下のリッパーの調査で2014年にドル資産比率を最も高めた10人のファンドマネジャーのうち、4人はロイターに対してそれ以降ポジションを縮小したと答えた。ドル資産比率を高めたのは1人だけで、残る5人はコメントしなかった。

ドル最強気派の一角を占めていたプルデンシャル・グローバル・トータル・リターン・ファンド(資産額3億9800万ドル)は、14年末で58%だったドル資産比率を2月末時点で54%に引き下げた。

運用担当者のマイケル・コリンズ氏は「われわれはドル高について、米国の輸出品を割高にすることから、米国経済にとっての『逆風』とみなしている」と語った。またドルは上値が重くなる気配を示していると分析し、「ドル買いはみんなが殺到する取引なので、いつも少し不安を覚える」と打ち明けた。

プルデンシャルの13年末時点のドル資産比率は27%にすぎなかったという。

そのほかドル資産比率を下げたのは、エリック・ワイスマン氏のMFSグローバル債券ファンド(6億4700万ドル)や、クリストファー・ディアス氏が率いるジャナス・グローバル債券ファンド(3億6100万ドル)。ディアス氏は、米利上げまでこれまで予想されたよりも長い時間をかける可能性があるという「ハト派的」なシグナルがFRBから最近発せられたとの理由で、ドル資産比率を縮小したという。

ジャナスのドル資産比率は14年末の76%が2月末に57%となった。

ファンド・エバリュエーション・グループの調査責任者グレゴリー、ダウリング氏によると、ファンドマネジャー全般の中でも今後ドルが強くなるかどうかの見方はほぼ真っ二つに割れていて、ドル高が続くとの予想が多数派だった数カ月前とは様変わりした。

主要通貨に対するドル指数の7日終値は14年6月末比で23%上昇し、ドル資産比率が高かったファンドのリターンを押し上げた。ただ、ドル指数は3月半ばにつけた高値からはやや軟化し、3月雇用統計が低調だったことによる痛手も続いている。

それでもモルガン・スタンレー・グローバル・フィクスト・インカム・オポチュニティーズ・ファンド(2億4500万ドル)

のマイケル・クシュマ氏は、ドルに最も楽観的な1人で、ファンドのドル資産比率を14年末の97%から現在は約99%まで引き上げている。

クシュマ氏は、米国の雇用トレンドの明るさと安いエネルギー価格のおかげで、FRBが来年初めまでに利上げする可能性は依然として大きい半面、他国の中銀による金融緩和の効果が実体経済に浸透するにはまだしばらくかかると主張。「米国以外で良いニュースは依然としてそれほど多くないし、米国内の悪いニュースは一過性だと、われわれは考えている」と述べた。

(Ross Kerber記者)

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