インタビュー:国債に依存しない体制へ=筒井・日生社長

2015年4月10日(金)18時03分

[東京 10日 ロイター] - 日本生命保険の筒井義信社長は10日、ロイターとのインタビューで、低金利を背景に、今後は国債に依存しない分散したポートフォリオを構築していく必要があるとの見解を示した。外国債券、国内外のクレジット投資、新興国やインフラ関連の投融資を増やす。

日本株への投資については、残高を大きくは減らさないが、大きく増やせる状況でもないと語った。

2015年度からの3カ年計画で、強化を打ち出しているアセットマネジメント事業は、国内外で買収・提携を検討すると表明。出遅れている銀行での保険販売事業は、新たに子会社を設立して展開する方針を示した。

日本生命は14年度中間期で、売上高に当たる保険料収入で第一生命保険に追い抜かれた。筒井社長は「トップライン(保険料収入)は、超長期で見るとボトムに影響する。あらゆる分野でナンバー・ワンという体制は堅持しなければならない」と語り、国内首位の座を守る方針を強調した。

主な一問一答は以下の通り。   

――保険料収入でトップにこだわる理由は。

「生命保険業は、トップラインがそう簡単には利益にはつながってはいかないが、超長期的には利益に影響する。もう1点は、トップラインが一番でないということは従業員の士気に影響してくる。あらゆる分野でナンバー・ワンという姿勢は堅持しなければならない。これまで歴史的にトップだったのだから、余計にこだわらなければならない」

――第一生命は、銀行窓販での販売が大きく寄与した。どのように対応するのか。

「新しい3カ年計画をまとめたが、大きく変わる世界と変わらない世界がある。営業職員チャネルを持続させて成長させるのが、変わらない世界の基軸だ。一方で、(他社が)窓販などの販売チャネルで大きな販売額を出してくると、トップラインで負けてしまう。それは、我々としては不本意だ。ステージを変えて、そちらにも踏み込んでいかなければならない」

「窓販は本体でやり続けてきたが、商品を機動的に出すという体制が十分ではない。銀行窓口や保険ショップなどの新しいチャネルには、子会社の方が機動的に商品供給できる。別会社方式は、自ら作るという考え方もあるし、国内の会社を獲得するという考え方もある」

――中期経営計画では、アセットマネジメント業務にも注力する方針だ。

「買収するか、提携するかは別にして、将来的にパートナーになりうる先を国内外で検討していく。すでに提携というかたちで海外のアセットマネジメント会社とのネットワークがあり、海外の商品を輸入してそれを日本でさばいたり、逆に日本株ファンドの海外への輸出にも取り組み始めている。相互商品供給の世界をさらに追及していく。米国には、特色あるアセットマネジメント会社がある。規模が大きい企業には入り込む余地はないが、そういうブティック型の運用会社は少しリサーチしている」

「子会社のニッセイアセットマネジメントは、運用資産を現在の7兆5000億円程度から3年間で9兆円程度に持っていきたい。10年タームでは、現在は中堅規模だがトップクラスに食い込みたいという希望はある」

――低金利状態が続く中で、運用はどう変わるか。

「ある意味で、運用のスコープを広げていく前向きな機会だ。国債に依存したポートフォリオ体制から、それに依存しないさらに分散を進めたポートフォリオ体制を組んでいく。1つは外国債券。2つ目は国内外のクレジット投資。3つ目は、成長新規領域に対する投融資だ」

「外国債券は、市場で大きく投資できる。規模としては一番大きい運用先だ。クレジット投資や成長新規領域は、市場で大きく押さえるというわけにはいかない。一つ一つのクレジットを見て審査をしなければならない。環境関連やインフラ、PFI、新興国投資などの成長新規領域には、向こう5年で1兆円程度を取り組む。挑戦的な目標だ」

――日本株に対するスタンスはどうか。

「がんばって持ちたいと思っている。大きく残高を減らすつもりはないが、大きく残高を増やせる状況にもない。局面局面で選別していくことになる」

「我々の対話を重視するスタンスは引き続き変わらないが、日本版ステュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)が導入されたことで、銘柄選別をより強化する契機になる。我々は、平均保有期間34年。長期投資家だ。対象銘柄と一緒に成長して、長期にわたって長期の還元を期待する」

「配当性向が短期的に低いという理由で、議決権行使に及ぶという考え方もあるが、そこは直結させないようにしたいに思っている。配当性向が低ければ、対話に入る。仮に低くても、その内部留保で将来の成長を計画するという説明があれば、我々は是認する。長期投資家の特性を、生かしていく」

*インタビュー時の写真に差し替えます。

(インタビュアー:布施太郎、浦中大我 編集:田巻一彦)

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