止まった海外勢の日本株買い、日経平均2万円へ3つの条件
[東京 3日 ロイター] - 海外投資家の日本株買いがガクンと止まった。短期調整に入っている需給的な理由はそこにある。利益確定売りが終われば再び買いが再開するのか、それともしばらく様子見か。
日経平均が2万円を目指すのに欠かせない彼らの買いが戻るには、高い期待を超える企業業績、大崩れしない米株、為替の安定の3条件がそろう必要があるとの見方が聞かれる。
<日本株の主導権はやはり海外勢>
「官製相場」といわれる今の日本株市場だが、需給面の動きをみる限り、相場の主導権を握っているのは依然として外国人投資家だ。
現物株と先物を合わせた海外投資家の日本株買いの動きをみると、今年に入って、1月1─2週に1兆9700億円売り越したことで、日経平均は約850円下落。その後、3月第2週まで計3兆7300億円買い越し、今度は3100円上昇(3月23日高値まで)した。
国内年金の買いがしばしば市場の話題になるが、信託銀行は1月1─2週に約3600億円買い越したものの、日本株は大きく下落。その後もコンスタントに買い続けているが、3月第2週まで累計は約4500億円と海外勢の約8分の1だ。「日銀や公的年金が買ってくれるという安心感が海外勢の買いを誘っている」(外資系投信)という面もあるが、直接的に日本株を買い上げているのは海外勢に他ならない。
その海外勢が3月3─4週と売り越しに転じた。日経平均は3月第4週から調整に入ったが、信託銀行は約3000億円の買い越しだったのに対し、海外勢は約3300億円の売り越し。ここでも主導権は海外勢にあることを証明した。今週に入って、日経平均は1万9000円の大台を割り込んだのは、「国内勢の期初の利益確定売りなどを警戒して海外勢が先に売りに動いた」(大手証券トレーダー)との見方がもっぱらだ。
<企業業績にはすでに高い期待>
3日の日経平均は続伸し、1万9400円台まで回復してきた。だが、東証1部売買代金は1月26日以来の2兆円割れと再び上値を追うエネルギーに欠ける状態だ。2万円大台を目指すには、上値を買ってくれる海外投資家の再参戦が不可欠だが、それには、3つの条件が必要になるとみられている。
1つは、今月後半からスタートする決算発表で、期待値を上回る業績(見通し)が発表されることだ。3月末から幾分調整したとはいえ、日経平均の予想株価収益率(PER)は17倍前半。欧米株のPERも高いため、それほど目立たないが、歴史的には上限に位置する。
来期以降の増益を織り込めば、PERは低下するが、逆に言えば来期増益を相当程度、織り込んだ水準にある。高い市場の期待値を上回るような業績見通しが示されなければ、一段の上値を追うのは難しい。
JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は「10%程度の増益予想が示されたとしても、海外投資家にとって予想の範囲内であり、株価には織り込まれてしまった。10月の中間期決算発表で一段の増益への確信が得られるまでは上値を追うのは難しいのではないか」とみる。
<円安よりも為替の安定>
また為替の安定も欠かせない。円安は日本株にとって必ずしもプラス要因ではなくなってきた。輸入物価上昇などの円安デメリットだけでなく、円安が進めば、ドル建ての日経平均を圧迫することになり、海外投資家にとって魅力は低下するためだ。
かといって円高が進んでしまえば増益期待が後退する。1ドル120円前後をキープすれば、2015年度に関しては対14年度比で平均10円程度の円安になるので、かなりの利益押し上げ効果が期待できる。いまの日本株にとっては、さらなる円安よりも為替の安定の方がよりプラス効果があるとの見方は多い。
3つめは、米株が崩れないことだ。米利上げの時期はまだわからないが、早期実施・先送りともに米株が大きく下落するリスクをはらむ。先送りはプラス要因のようにもみえるが、その原因が米経済の減速であれば、ネガティブ要因とも受け止られる。米株は依然として過去最高値水準にあり、調整への警戒感も大きい。
「米株の調整が小幅であれば日本株への資金シフトが期待できるが、大幅調整となればリスクオフとなり、海外勢は日本株からもいったん資金を引き揚げるだろう」(岡三証券・投資戦略部シニアストラテジストの大場敬史氏)。最近では相関性が薄れたようにみえる日米株だが、グローバル金融相場のなかでは、引き続き海外勢の動向には注意が必要だ。
(伊賀大記 編集:宮崎大)
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