アングル:ESG投資に脚光、GPIFの「検討」きっかけ

2015年4月2日(木)20時09分

[東京 2日 ロイター] - 「ESG投資」がにわかに脚光を浴び始めた。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が5カ年中期計画に「ESG投資の検討」を盛り込んだことをきっかけに、他の年金の追随が期待されるためだ。ESG投資が普及すれば、企業のガバナンス改善に寄与すると期待する声が出ている。

ただ、ESG投資導入によるパフォーマンス向上に対し、疑問視する声も漏れる。

ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を集めた造語。ESGについて適切に配慮・対応している企業は、経営の持続的な成長が見込め、投資家もそれを評価することで、持続可能な社会の形成に資するとの考え方に基づいている。

GPIFが2日発表した中期目標に、「収益確保のため、非財務的要素であるESGを考慮することについて、検討する」との文言が新たに追加された。

GPIFは昨年10月、ESG投資に関する調査研究をMSCIなど3社に業務委託済み。調査結果を受け、今年6月にも運用委員会に置いて、その是非を検討する見通しだ。

世界のESG投資推進団体をまとめるGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)によれば、各地域の総運用資産におけるESG投資資産の割合(2012年12月末)は、欧州の49.1%や米国の11.2%に対し、日本はわずか0.2%に過ぎない。

ただ「GPIFがESG投資を採用すれば、共済年金など他の国内機関投資家が、足並みを揃えてくる。欧米に水を空けられていた日本のESG投資残高は、拡大するだろう」と野村証券金融工学研究センター・クオンツ・アナリストの山本雅子氏は述べる。

ESG投資の活発化で期待されるのは、企業のガバナンス改善だ。今年6月にコーポレートガバナンス・コードが策定されることもあり、企業は社会・環境問題などを含むリスクへの対応を迫られている。

T&Dアセットマネジメント執行役員の山中清氏は「最近ではカーボンリスクなどを意識する海外投資家が、増え始めている。ESGの観点から評価されていない日本企業が変われば、海外マネーを引き込む可能性は高い」とみている。

一方、ESG投資の普及にとってネックとなるのは、パフォーマンスに対する見方だ。アムンディ・ジャパン投資情報部長の濱崎優氏は「(企業が)環境などを重視したことで収益性が悪化したら、元も子もない。ESGは財務に直結せず株価とは無関係」とし、ESG投資が必ずしも指数をアウトパフォームするとは限らないと指摘する。

また「ESGを判断基準に取り入れれば良い企業を選べるだろうが、コスト面で投資家の負担も大きい」(東海東京調査センター・チーフストラテジストの隅谷俊夫氏)との声も出ている。

(杉山容俊 編集:田巻一彦)

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