アングル:中国の新不動産支援策、高リスクの銀行は苦い思いも

2015年4月1日(水)15時28分

[上海/香港 31日 ロイター] - 中国当局は3月30日に住宅ローン政策や税制を緩和する不動産市場支援策を発表した。株式投資家はこうした動きをはやす一方、規制緩和でリスクが高まる銀行は苦々しい思いを抱いている。

中国経済の15%を占める住宅市場が過去最速ペースでの価格下落に直面するなか、中国当局は住宅購入者がローンを受けやすくすることで市場の復活を狙っている。

しかし、ある意味では住宅購入者が恩恵を受けるために生じるコストを銀行が肩代わりするものとも言える。

国内大手銀行のあるローン事業担当者は「われわれにとって悩ましいのは(住宅を購入しようという預金者が増えて)預金が減少し、リスクが高まることだ」と指摘。「これはレバレッジの問題だ」と話す。

中堅銀行の別の担当者は、頭金比率が40%に引き下げられる優遇策を受けられるかどうかは住宅購入者の信用評価などによる、とした上で「国有企業や政府機関の幹部については、頭金比率を引き下げるのは全く問題ないだろうが、その他の住宅購入者が優遇を受けられるかは、何とも言えない」と述べた。

<「貸出金利は引き下げず」>

中国景気の減速を受け、利ざや縮小や不良債権比率の上昇に直面する各行の圧力は既に増している。中国は2月末までのわずか3カ月間で2度の利下げに踏み切ったが、2月の住宅価格の前年比下落率は過去最大の5.7%となった。

中国最大の不動産開発企業、万科企業の郁亮総裁は、新たな不動産市場支援策で需要が回復することに期待を示す一方、大幅に積み上がった住宅在庫への懸念も漏らす。

シンガポールのOCBC銀行のエコノミストはリサーチノートの中で、「現行の措置が不動産市場を後押しできるかどうかは依然不透明だ」と指摘。「しかしながら、(新たな措置を受けて)政策当局者が(経済)成長を再び重視していることがより明確になっている」と述べ、4─6月に追加利下げやその他の緩和措置が打ち出されるとの見方を示した。

一方、株式投資家にとっては住宅ローン政策の緩和は歓迎すべきニュースだ。

中国株は31日に7年ぶり高値に上昇。銀行株や不動産株がにぎわった。2014年に50%上昇した中国株は、政策追加緩和期待を主な背景に今年に入ってからも16%値を上げている。

不動産株の上昇は、決算発表を控えて積み上がっていた同株のショートポジションを解消する動きにもつながった。

マークイットのデータによると、万科企業株は今週、アジアで最もショートが積み上がった株式となっている。2番目に入ったのも中国不動産開発業界4位の恒大地産株だ。

不動産株に対する空売りが功を奏すかどうかはまだ分からないが、住宅ローン政策の緩和を受けても、一部の銀行は積極的に融資を増やそうという意識に乏しいようだ。

ある中堅銀行筋は「頭金比率70%でも赤字となっており、貸出金利の引き下げはないだろう」と語った。

(Engen Tham記者、Clare Jim記者 執筆:Koh Gui Qing記者 執筆協力:Pete Sweeney in SHANGHAI and Umesh Desai in HONG KONG 翻訳:川上健一 編集:吉川彩)

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