大企業製造業改善せず、収益計画は慎重=日銀短観ポイント分析

2015年4月1日(水)10時40分

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月日銀短観では、大企業製造業の景況感が事前の改善予想に対して横ばいにとどまり、先行きも悪化方向となった。

他方で非製造業は2ポイント改善し、予測を上回ったが、先行きは悪化見通しとなった。新たに発表された15年度事業計画は、収益計画が14年度の伸びを下回る慎重なものとなった。設備投資計画は、製造業では最近では高めのスタート。雇用は引き続き全規模・全産業で不足超過となっている。

・企業マインド、足元大企業製造業横ばい、非製造業は改善

業況判断DIは大企業製造業で足元横ばい、先行き2ポイント悪化となった。事前のロイター予測では足元2ポイントの改善が見込まれていたが、予測を下回った。加工型業種の方が素材業種より改善幅が小さく、円安が一服していることが影響しているもよう。特に自動車は足元横ばい、先行きも大幅悪化となっており、円安効果は景況感改善につながっていない。

非製造業は足元2ポイント改善、先行きは2ポイント悪化となり、一進一退の様相。停滞していた小売りは7ポイントと大幅に改善して景況感はプラスに浮上、先行きも8ポイントの改善を見込む。春闘での賃上げが広がり、エネルギー価格の下落に伴い物価が低下する見通しもあり、家計に好影響が見込まれることが寄与しているもよう。

中小企業では、製造業が3ポイント悪化、先行きも1ポイント悪化となり、大企業・製造業と同じくさえない。非製造業は足元2ポイント改善、先行きは4ポイント悪化と慎重な見方となった。

もっとも景況感自体は、大企業は製造業、非製造業ともに2桁のプラス水準を維持しており、中小企業もプラス圏にあり、水準は決して低くない。

・想定為替レート、新年度111円台の見込み、円安見込まず

収益計画の前提となる為替相場は、14年度下期が1ドル=111円、15年度も同じく111円台を見込んでいる。足元の相場よりも円高を想定。円安進行は見込んでおらず、輸出売上高計画も、14年度の前年度比3.5%増に比べて15年度は同1.6%増と控えめな伸びとなっている。

・15年度は慎重な収益見通し、設備投資は製造業で高めスタート

大企業全産業の売上、経常利益計画はそれぞれ、14年度実績見込みが前年度比2.7%増収、4.3%増益となった。15年度計画は、これよりも控えめとなり、0.7%増収、0.6%増益見込みとなっている。売上計画は国内、輸出ともに14年度よりも伸びが低めとなっており、企業は期初計画では慎重な見通しを示している。

設備投資計画は製造業と非製造業で対照的となった。大企業製造業は前年度比5.0%増と過去4年よりも高い伸びでのスタートとなった。製造業では、一部に国内回帰の動きもあるほか、老朽化設備の更新投資も活発化し、最新技術での生産ライン整備への意欲も見られ始めている。

他方で非製造業は同4.1%減と、過去よりも低いスタートとなった。

・需給ギャップ、雇用不足続く

雇用や設備の需給ギャップを示す判断DIは、設備については全規模・全産業でやや不足気味の状態。前回調査と比べると、足元は横ばいだが、先行きはやや不足気味方向の見通しとなった。雇用判断は引き続き全規模・全産業で大幅な不足超過状態で、前回調査からも不足感が強まった。特に非製造業は人出不足が深刻で、不足超過幅が大きい。

(中川泉)

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