焦点:ゆうちょ・かんぽの国債離れ、償還再投資見送りなら30兆円に
[東京 31日 ロイター] - 日本郵政傘下のゆうちょ銀行と、かんぽ生命保険の国債離れが鮮明になってきた。2015年度は、ゆうちょ銀が国債投資を半減させる方針を独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構に提出した。残高見通しから逆算すると、償還分を再投資しない場合は30兆円余りが国債(地方債、政府保証債含む)市場から流出する計算になる。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の次の買い手を期待する株式市場の関心を呼びそうだ。
管理機構が31日発表した「安全資産の保有状況」によると、ゆうちょ銀行は15年度に14兆3838億円の国債投資を行う計画だ。14年度計画額からは18兆9520億円減少し、3年続けて減額となる。管理機構によると、ゆうちょ銀の国債投資計画としてはもっとも低い。
一方、かんぽ生命は、14年度計画比8150億円増の3兆7350億円とする計画で、2年ぶりの増額となる。
ゆうちょとかんぽは、安全資産での運用額が、民営化前の旧勘定にあたる管理機構の預かり金または保険金等を下回らないよう義務付けられている。
ただ、旧勘定で整理する資産は、大幅に減少。ゆうちょは民営化後の131兆7000億円(07年10月末)から22兆円4247億円(15年2月末)、かんぽも108兆4206億円(08年3月末)から63兆7414億円(14年3月末)となり、「安全運用の『縛り』が薄れつつある」(政府関係者)ことが、国債離れの背景にある。
国債(地方債と政府保証債を含む)の残高ベースでは、ゆうちょ銀が14年度末(計画ベース)の144兆8740億円から15年度末は111兆5550億円になる見通し。かんぽも投資計画は増額だが、残高をみると14年度の69兆3285億円から15年度は68兆7852億円に減る。
日銀の量的・質的金融緩和による超低金利を敬遠し、仮に償還再投資をすべて見送った場合は、償還分とみられる計30兆3726億円分の運用先が注目されることになる。
今秋以降の株式上場に向け、日本郵政は運用面での収益向上も目指している。超低金利で稼げない分をどこまでリスク資産に振り向けるか、その点が今後の焦点となる。
官製相場の次の主役はどこか。株式市場では「GPIFの国内株式比率が25%なら、(安全運用の縛りがかかる)ゆうちょやかんぽなどの国内株式比率は、8─10%になるのではないか」(国内投信の執行役員)との観測もあり、GPIFに次ぐ買い主体として期待が高い。
いずれも10%に引き上げられると、単純計算で約26兆円が株式市場に流れ込むと、前出の投信幹部は期待を寄せている。
(杉山容俊 編集:田巻一彦)
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