インタビュー:アジア投資の検討継続、スカイマーク支援は出資が前提=ANAHD新社長
[東京 31日 ロイター] - 4月1日付で就任するANAホールディングス(ANAHD)の片野坂真哉新社長は30日、ロイターとのインタビューで、アジアの航空会社などへの出資を引き続き検討していることを明らかにした。また、事業スポンサーとして支援する意向を表明した民事再生手続き中のスカイマークに対しては出資が前提との考えを示した。
ANAHDは昨年、ミャンマーの航空会社への出資を表明しながら、収益が悪化した同社との交渉が折り合わず取りやめたが、片野坂氏は、現在も「アジアの航空会社へのアプローチはやめてない」と述べた。欧米ではすでに進んでいる業界再編が今後はアジアでも起こるとみており、その中で「アジアの航空各社と出資を含めて関係を強化することは非常に良い」と語った。
ANAHDは13年に米パイロット訓練会社を買収したが、日本文化や日本食など「日本の知名度が上がる」ような案件にも今後、出資したいという。昨年に日本の生活産業の海外展開を支援する官民ファンド、クール・ジャパン推進機構に出資。この3月には子会社の全日空商事を通じてシンガポールに合弁会社を設立し、海外で和食モールの展開を企画する外食事業に乗り出した。
成長の柱とする国際線については、日本文化への関心や日本食ブームが高まる中、ANAが「外国人から選ばれる可能性はますます高くなる」と期待を寄せた。今後、ロシアや中東、アフリカなどの就航を検討するが、景気変動、自然災害やテロなど「だいたい何年かに一度、思わぬ困難が必ず来る。どんな困難が来ても乗り越えられるようにしておく」として「各方面にネットワークを広げておくことが大事」と語った。
国内線についても、市場が「シュリンク(縮小)するとは思わない」と話す。例えば、北陸新幹線が開通したことで航空旅客数は減るが、「想定よりも減り方が少ない。今後も50%のシェアを堅持したい」と述べた。
公的資金により再生した日本航空にかかっている新規投資などの制限が2017年4月以降はなくなるため、それまでに「路線拡大や投資スピードも上げる」(片野坂氏)方針。
2025年度の連結売上高目標は2兆5000億円だが、片野坂氏は「3兆円くらいやらなければだめじゃないかと言われ始めている」と話し、「非常にいい状態で(社長を)引き継ぐので、失速しないようにしっかりやっていきたい」と意気込みを語った。
一方、スカイマークについては、羽田空港の発着枠を1日36便持つ同社が他社の手に渡ることはANAHDの「企業価値上、看過できない」と明言。現行の国土交通省ルールの下で羽田枠を確保するために、出資比率は「最大でも20%未満」とするが、「まったく出資をしないということは考えにくい」と語った。
また、ANAHDが再建に関わった格安航空会社のAIR DO(エア・ドゥ)やスカイネットアジア航空でも「累損を一掃していくには10年以上の年月がかかっている」と指摘。国交省が期限付でスカイマークへの出資を容認する場合、5年で出資引き揚げを要請されても「『ハイ』とは言えない」として、そうなれば「5年では困ると当局にお願いにいくつもりだ」と述べた。
スカイマークに対して債権者が届け出た債権総額が約3000億円に上るとみられ、経営破綻時に約710億円としていたスカイマークの負債総額は大幅に膨らむ見通し。片野坂氏は「債権額がどのように圧縮されるか今後、非常に注目される。非常に大きな負債を抱えた会社を再建するのは非常に大変」などと話した。
ANAHDとしてはスカイマークと共同運航や燃油の共同調達、安全面でのサポートなどで「ウィン・ウィン」の関係を築きたい考えで、現在は「選ばれるのを待っている」(片野坂氏)状況だ。ただ、当初2月中の決定を予定していた事業スポンサー選定は大幅に遅れている。
すでに資金を提供し、スカイマーク支援で主導権を握る投資ファンドのインテグラル代表、佐山展生氏は、大手航空会社の支援がなくても表明している最大90億円のつなぎ融資で事業継続は可能と判断しており、事業スポンサーに出資を前提条件としない考えを示している。
また同氏はメディアなどでたびたび、破綻する前にいったん支援を取り下げたANAHDに対するスカイマーク社員の不信感は強く、この不信感を払しょくする提案がないと次に進めない、などとも発言しており、選定作業は難航している様子だ。
(白木真紀 編集:田中志保)
- 1/1