物価目標、厳格に考える必要ない=原田日銀委員

2015年3月26日(木)21時24分

[東京 26日 ロイター] - 26日に就任した日銀の原田泰審議委員(元早大教授)は同日夕、日銀本店で会見し、2年で2%の物価目標達成を厳格に考える必要はないと述べるとともに、今すぐ追加金融緩和が必要な状況ではないとの認識を示した。

一方、「物価が上がらず人々のデフレマインドが強まるなら、追加緩和も必要」と明言。財政による景気刺激効果に否定的な考えを示した。

<原油安で物価2%後ずれ「大きな問題ではない」>

日銀は2013年4月のQQE開始時に「2年で物価上昇率2%」のスローガンを掲げ、現在も15年度を中心とした時期に2%の物価目標を達成するとの方針を堅持している。

原田氏は物価2%目標を2年程度で実現するとの日銀の約束について「目標の数字と期間を両方ともリジッド(厳格)に考えるのは難しいし、考えることはできないのではないか」と柔軟な姿勢を示した。物価上昇率2%の実現という「コミットが重要」としながらも、原油価格の下落という日本経済にプラス効果が見込める要因で物価が短期的に下押しされ、2年程度で物価2%が達成できなくても「大きな問題とするべきではない」と語った。

原田氏は金融政策運営に関し、国債買い入れの重要性を主張しているが、この点については「今すぐ国債を買い、さらなる金融緩和が必要という意味ではない」と発言。もっとも、日銀による昨年10月末の追加緩和は「妥当だった」と評価し、「物価が上がらず、人々のデフレマインドがさらに強くなることがあれば、追加緩和も必要」との認識を示した。

<追加緩和手段は国債が軸、財政効果に否定的>

追加緩和の具体的な手段については「どういうものを買った方がいいのか、具体的なオペレーションは話さない方がいい」としながらも、「株とかREITをどれだけ買えるかは、ある程度制約はあるのではないか。ただ、これ以上買えないということではない」と言及。そのうえで「量的・質的金融緩和は主として国債を買うこと。量的緩和をすれば必ず国債を買うということであり、国債を買い入れること自体が金融政策だ」とし、追加緩和手段も国債の増額が主軸との考えを示唆した。

金融緩和の推進によって景気が回復し、「結果的に財政赤字が減るのは事実」としたが、「減っているからいくらでも財政を出してもいいわけではない」と強調。財政出動による景気刺激効果について「わたしは財政乗数はあまり大きくないのではないかと考えている」と述べ、金融政策の効果が証明された中で「金融緩和だけして財政政策をやらないと、財政状況は良くなる。財政政策で無理やり景気よくする必要性は低下しているのではないか」と語った。

日銀では、これまで現行3%台半ばに低下している完全失業率をほぼ完全雇用の状態と説明してきたが、原田氏は「物価が上がっていない状況で、現在の失業率を完全雇用と言うことはできない」と主張。完全雇用状態の失業率は2.5%程度との認識を示した。

潜在成長率についても、デフレが15年も続いた中では「過去のトレンドで潜在成長率をつくって、それが潜在成長率だというのは正しくない可能性がある」と述べた。

*内容を追加し、写真を差し替えて再送します。

(竹本能文、伊藤純夫)

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