訂正:アングル:米自動車労使交渉に暗雲、メキシコへ生産シフト

2015年3月27日(金)01時18分

[デトロイト 25日 ロイター] - 全米自動車労働組合(UAW)は25日、今夏の労使契約交渉では賃上げ要求が最優先事項になると表明したが、業界の雇用と生産が労組に加盟していない国内工場やメキシコへのシフトが進む中、交渉は難航する可能性もある。

米調査会社IHSによると、メキシコの自動車生産は今後6年間で北米市場の4分の1以上の規模に拡大する見通し。

ゼネラル・モーターズ(GM)は今週、メキシコで小型車「シボレー・クルーズ」の次期モデルを生産すると発表した(訂正)。

今夏にGM、フォード・モーター、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の米大手3社と労使交渉を開始するUAWにとって、自動車生産拠点としてのメキシコの台頭は、唯一のマイナス要因ではない。

もうひとつの負の要因は組合員の減少だ。この5年間では自動車販売の回復に伴い増加したものの、1979年以降では75%減少している。

UAWのデニス・ウィリアムズ委員長は、新規採用者の時間給が16─19ドルとほぼ同じ職務に就く熟練工の約28ドルを大幅に下回る状況をもたらしている二層構造の賃金体系を廃止したい意向を表明。「すべてのメンバーの賃金を引き上げ、差を埋める」ことを目指すと述べた。

この賃金体系は米3社の業績悪化を受けて2007年に導入されたが、各社の業績が回復した今、労組幹部らは二層構造の改善を求める意向だ。

だが、労組メンバーからはウィリアム委員長の「差を埋める」という言葉に困惑の声も聞かれる。

フォードのシカゴ工場従業員を代表するScott Houldieson氏は「二層構造という言葉を契約から完全に排除してほしい」と訴えた。

これまで数十年にわたり、UAWの幹部らは米大手各社の労働コストを同水準に維持することの重要性を強調してきた。

しかし現在、米国で販売されている自動車の大半はUAWのメンバーが生産した製品ではなく、北米では労組に加盟しないアジアや欧州勢の工場が着々と増えている。

米自動車研究センター(CAR)によると、米メーカーのメキシコ従業員の時間給は福利厚生を含めて8─10ドル。一方、米国内ではGMの時間給が平均58ドル、フォードが57ドル、FCAは48ドルという。

米南部の労組に加盟しない工場ではFCAの水準を下回る。例えば、現代自動車のアラバマ工場の平均時間給は42ドルだ。

労使関係コンサルタントで元GMの労使交渉担当者アーサー・シュワルツ氏は「新たな雇用の多くは二層の下部に依存している」と指摘。「それを取り除くことは(米国の雇用がさらにメキシコにシフトする)道を開くことになる」と警告した。

*英文の訂正により、第3段落の「小型車『シボレー・クルーズ』の次期モデルを生産する工場をメキシコに建設する」を「メキシコで小型車『シボレー・クルーズ』の次期モデルを生産する」に訂正します。

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