焦点:新生銀が切ったトップ交代カード、新ビジネスモデルが課題
[東京 25日 ロイター] - 新生銀行が経営トップの交代を決めた。5年にわたり経営の陣頭指揮を執った当麻茂樹社長の後任に就くのは、51歳の工藤英之常務執行役員だ。
りそなホールディングスやあおぞら銀行が今夏にも公的資金を完済する見通しの中、めどが立たない新生銀で独自のビジネスモデルを構築し、完済の道筋を付ける重責を担うことになる。
<道半ばで退任の当麻社長>
25日午後に記者会見した当麻社長は、退任理由として健康問題があったことを明らかにしたうえで、「この5年間で、新生が生きていくための方向性や価値観は作ることはできた。特に後顧の憂いもない」と振り返った。
2010年、当時の八城政基社長兼会長の後を受けて社長に就任。不動産投資などにのめり込み、2期連続の赤字に転落した新生銀のビジネスモデルの抜本改革に着手。成長企業や再生企業などの中堅・中小企業向けの取引拡大にかじを切った。
しかし、16年3月期を最終年度とする中期経営計画で掲げた目標・当期純利益700億円に対し、15年3月期見通しは630億円で、計画は道半ばだ。
<求められた銀行法24条報告>
昨年末から今年1月までに実施された新生に対する金融庁検査。同庁は、1)経営戦略、2)ガバナンス体制、3)システム──の3点で課題があるとして、銀行法24条に基づく報告を求めた。
関係者によると「ビジネスモデルが明確に描けていないとの指摘があった」という。
新生は来年度、次期中期経営計画をまとめる。焦点は、どのような新しいビジネスモデルを構築するかだ。
次期社長の工藤氏は会見で「基本的な考えは、当行の強みや弱み、経営資源を再認識した上で、コンペティターとは異なる価値を提供すること」と語った。
子会社や銀行本体で手掛ける消費者金融事業やリテール分野では、一定の存在感を発揮しているものの、課題となるのは法人取引。「中堅・中小企業の取引は、なかなか拡大できていない」(関係者)という指摘もある。
新生銀に残る公的資金は2169億円。株価が700円半ばを超えなければ、株を保有する国に損失が発生してしまうが、25日の終値は前日比2.06%高の248円。返済への道は、なおかなりの距離がある。
企業価値を高める施策をどのように打ち出し、実現していくのか。銀行界で最も若いトップが直面する課題となる。
(布施太郎 編集:田巻一彦)
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