FOMC後にマネー逆流、海外長期筋のスタンスは変わらず

2015年3月19日(木)18時53分

[東京 19日 ロイター] - 18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が予想以上にハト派的だったとの受け止めから、マネーの流れが逆転している。早期米利上げ観測が後退し、米金利が低下。ドルが下落する一方、ユーロだけでなく、新興国通貨が反発している。

日本株高も一服した。ただ、あくまで海外短期筋の動きが中心で、金融政策の方向性の違いをベースにした長期投資家のスタンスには変化はないとの指摘も多い。

<「先行組」が利食い>

ドル/円が18日の海外市場で119円台前半まで下落したにもかかわらず、朝方はプラス圏に浮上した日経平均だったが、先物にまとまった売りが出ると一気に200円安水準まで軟化した。終値では67円安まで戻したが、「海外短期筋が利益確定売りを出したようだ」(大手証券トレーダー)とみられている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「FOMCをきっかけにした海外短期筋の利益確定売りだろう。日本株を2月半ばから買った先行組が、いったん降りているようだ」との見方を示している。

イエレン議長のハト派的な発言と、FOMCメンバーの金利予想が引き下げられたことで、米連邦準備理事会(FRB)は利上げを急がず、利上げペースも緩やかになると受け止められた。上振れた2月雇用統計以降、米早期利上げを織り込み、ドル買いや日本株買いを膨らませてきた緩和マネーのポジションは、いったん巻き戻しを迫られている。

18日の米国市場では10年米国債利回りが2%を割り込み、ドルが急落。ユーロと英ポンドに対する1日の下げ幅としては6年間で最大となり、ユーロに対しては一時3%安となった。ドル高の一方で売られていたアジアなど新興国通貨は反発している。

一方、ドル/円は下げ渋り、19日のアジア時間には120円台後半に戻しており、先高観の強い日本株にとって、嫌気されるような円高レベルではない。ただ、日経平均は1月16日から前日まで約2680円(15.8%)上昇。短期過熱感も強まっていたことで、利益確定売りの対象になりやすかったとみられている。

<「主役」はやはり海外勢>

これまで日本株を押し上げていたのは、やはり海外投資家だ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など公的年金が買っていたとの指摘も市場にはあったが、データを見る限り「主役」は海外勢だ。

東証と大阪証券取引所が公表する日本株の現物株と先物を合計した売買動向で、海外投資家は2月第2週から買い越しに転じ、前週までの合計は3兆0540億円。その間、日経平均は約1900円上昇し15年ぶりの高値を付けた。国内年金の売買を仲介している信託銀行の買い越し額は、同期間で763億円に過ぎない。

一方、年初からの2週間で、海外投資家は1兆9719億円を売り越した。信託銀行は3610億円買い越したが、日経平均は約850円下落。海外勢が一斉に売りに転じれば、国内勢の買いでは支えきれないことを示した。

デリバティブをからめた大規模な売買を得意とする海外勢が、日本株にいったん利益確定売りを出そうとしている動きは、前日からみられていたとの指摘もある。市場筋が推計した寄り付き前の外資系証券6社経由の注文状況は、前日18日に2530万株(105億円)と大幅な売り越しとなっていたためだ。その日、日経平均は107円高となったが、「変調」の兆しと受け取る声もあった。

<長期投資家は依然強気>

ただ、利益確定の動きは一時的との見方も多い。売りを出したのは海外勢の中でも足の速いヘッジファンドなどで、長期投資家は依然として日本株などに強気な姿勢を崩していないという。実際、海外からの評価が高まっているファナックやトヨタ自動車は逆行高となり、連日の上場来高値更新となっている。

アライアンス・バーンスタインのマーケット・ストラテジスト、村上尚己氏は「利上げ先送り自体は景気や企業業績を押し上げる材料であり、株価にはプラスだ。日本株の先高観も依然強く、利益確定売りが出ても一時的だろう」との見方を示す。

ハト派的な印象が強かった今回のFOMCで、6月の米利上げの可能性は低くなったとみられている。だが、金融政策の正常化に関しては「忍耐強く(patient)」いられるとした文言を削除し、約10年ぶりとなる利上げに道を開いたのも事実だ。

外為市場では、ユーロ/ドルは再び下落しており、19日夕方の市場では2%以上安くなっている。米利上げスピードが緩んだとしても、量的緩和を始めたばかりの欧州や、原油安による物価押し下げ圧力が強まっている日本とは、金融政策の方向性がやはり違うとの市場の認識は変わらないようだ。

大和証券のストラテジスト、弘中孝明氏は、ドル高の方向性は変わらず、日本株に対する為替のサポート材料がはく落したわけではないと指摘。「日米の金融政策の方向性の違いからバリュエーションの拡大余地は米国株より日本株の方が大きいとみられ、日本株は米国株を上回るパフォーマンスが期待できる」との見方を示している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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