目立つ生保の超長期債積み増し、需給好転で年度内購入急ぐ

2015年3月19日(木)18時43分

[東京 19日 ロイター] - 国内生保が超長期ゾーンを中心に日本国債(JGB)を積極的に積み増している。不安視されていた20年利付国債入札、米連邦公開市場委員会(FOMC)などビッグイベントを波乱なくこなし、買い安心感が広がっていることが背景にある。

年度末にかけて需給が引き締まる方向にある中、これまで様子見だった生保は、年度内での購入計画消化を急いでいる。

<イールドカーブが長いゾーンで極端につぶれる>

日銀が19日に超長期ゾーンを対象にオファーした国債買い入れオペは、想定以上に強い結果となった。20年利付国債入札翌日のオペだったが、応札倍率が2倍台となり、需給の引き締まりがあらためて確認された。

「オペ結果がこれほど強くなるとは思わなかった」と市場参加者の一人は驚きを隠せない。オペ結果確認後の19日午後の日本国債市場では、10年最長期国債利回り(長期金利)が一時、前日比5bp低い0.310%、20年超長期国債利回りは一時、同9bp低い1.040%といずれも2月3日以来、約1カ月半ぶりの水準に低下した。

30年超長期国債利回りは一時、同10bp低い1.240%と1月27日以来の低水準となった。

特に超長期ゾーン利回りは、18─19日のわずか2営業日で15bp超の急低下となった。イールドカーブは長いゾーンで極端につぶれ、ブル・フラット化の形状を鮮明にしている。

<ビッグイベント通過で買い一色>

不安視されていた18日の20年利付国債入札を無難に通過したことに加え、最大の注目材料とされた17─18日のFOMCの声明とイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の会見がハト派的な内容となり、様子見を決め込んでいた投資家に買い安心感が広がった。

ビッグイベントを通過したマーケットでは、買い一色となる。その主役が生保で、超長期ゾーンへの投資を活発化しているとの指摘がある。SMBC日興証券・シニアクオンツアナリストの山田聡氏は「年度内に相場が甘くなるイベントがなくなる中、押し目を待っていた保険会社にすれば、年度内の購入計画消化に向け、買わざるを得ないタイミングだったようだ」と指摘する。

超長期債利回りの低下スピードは急だが、もともと超長期ゾーンは流動性に課題を抱えているため、売り物が薄く需要が極端に強まると値が飛びやすい特徴がある。「まさに足元の状況は、極端に需要が強いことを示しており、カレント物ばかりではなく、周辺銘柄を含め、年度末に向けた生保の積極的な積み増しがみられている」(国内証券)という。

<買い材料が重なり需給引き締まる>

ビッグイベント通過のほかにも、生保を強気にさせた要因がある。年度末にかけて、入札は2年利付国債と流動性供給しかない。長いゾーンへの供給が限られるため、通常でも需給は引き締まりやすく、「ここに日銀の異次元緩和による国債買い入れ期待があるほか、3月特有の国債大量償還見合いの需要が強まることが想定できる。仮に売り材料が出てきても、それをはるかに上回る買い材料が重なっている」(外資系証券)との指摘がみ出ている。

ある生命保険会社の債券運用担当者は「国債の償還が多い3月だけに、年度末に向け積み増す方向にはある」と認めた。

<評価損解消で戻り売りも出やすい>

今後の超長期ゾーンの相場展開は、年度末まで金利の低下余地はあるとみられている。ただ、日銀の付利引下げの思惑から金利が急低下した1月20日に付けた20年ゾーンで0.845%、30年ゾーンで1.040%までの低下には「足元の金利低下でも距離がある。1月22日の金利反転上昇によるシコリは解消されておらず、評価損を抱えたままの投資家が多く、少しでも損を減らしたい水準に近づた現状では、戻り売りも出やすい。金利の低下スピードは徐々に落ちてくるのではないか」(国内金融機関)との見通しが出ていた。

(伊藤武文 編集:田巻一彦)

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