焦点:利上げ急がぬ米FRBを市場好感、13年の混乱と好対照

2015年3月19日(木)08時52分

[18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は18日、投資家が想定していたほど利上げに前のめりではない姿勢を示し、株式や債券市場は歓喜に身を躍らせた。かつて金融緩和縮小をめぐる懸念で激しく混乱した「テーパータントラム」とはまさに正反対の動きといえる。

FRBは連邦公開市場委員会(FOMC)の声明から利上げまで「忍耐強くなれる」との文言は削除したが、フェデラルファンド(FF)金利経路と経済成長率の見通しをともに下方修正した。これが株式と債券双方の値上がりをもたらし、投資家は米経済が過熱でも低調でもないちょうど良い状態(ゴルディロックス)にあるとみなした。

FRBは自らの認識を、短期金利先物のトレーダーの見方に近づけた。これらのトレーダーはずっと前から、FRBが早ければ6月にも利上げしようとしているとの意見には懐疑的だった。ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ氏やダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏といった著名投資家が最近、FRBは利上げに慎重になるべきだと提言したこととも平仄が合っている。

USグローバル・インベスターズのジョン・デリック調査ディレクターは「FRBと市場の間には意見の食い違いがあったが、今はFRBの方が市場にやや足並みをそろえてきた。それによって市場参加者が考えていた(政策金利上昇の)経路とペースは変わる」と指摘した。

S&P総合500種はFOMC声明発表前に比べて1.5%も上昇。米国債も10年債利回りが約3週間ぶりの水準に下がり、金融政策予想に最も敏感な2年債利回りは1日としては6年ぶりの大幅な低下を記録した。

これは2013年のテーパータントラムとは好対照だ。当時の市場は、FRBが量的緩和縮小に積極的なことを示唆したため動揺をきたした。

今回は、FRBの利上げは早まるよりは遅くなると見込まれるようになった。CMEフェドウオッチによると、トレーダーは現在、10月の利上げ確率を58%としている。9月の確率はFOMC前の61%から38%まで低下した。

FRBが18日公表した見通しでは、FF金利の2015年末の中央値は昨年12月時点の1.125%が0.625%に切り下がった。国内総生産(GDP)成長率の予想も下方修正された。

もっとも株式や債券にとって、今後の方向性は不透明だ。先物の持ち高動向からみると、トレーダーは長期債のショートを積極的に積み上げてきたが、2年と5年の先物はネットロングで短期債利回りは低下すると見込んでいる。

これに対して、利上げ観測を背景に多くのストラテジストは、短期債利回りは上昇して、長短利回り差が縮小するフラットニングが進行するとの見方を示してきた。

ただ一部のストラテジストは、足元の雇用の伸びが米経済において力強さが増している側面の1つであるにもかかわらず、今回のFOMC声明で利上げするには労働市場のさらなる改善が必要と表明された部分を重視しており、今すぐ短期債利回りが上がることはないかもしれない。

DAダビッドソンの債券トレーダー、メアリー・アン・ハーレー氏は「本当に重要な点はFRBが景気認識を引き下げたことで、つまり金利はより長期間、低めにとどまるというわけだ。そしてFRBが利上げする際にも、非常に抑え目のペースで実施するだろう」と述べた。

株式市場の投資家はFRBの動きを好感した。とはいえ、一部ではすぐにFRBの緩和策は一段の買いを呼ぶには力不足ではないかと指摘する声も上がった。

FOMC声明を受けて値上がりが目立ったのは公益や通信といった金利敏感セクターで、成長が再び上向くとの期待よりも金利動向に対する反応という側面が大きい。

一方で株式市場では企業利益が減少する中で、既にバリュエーションへの懸念が出ている。ここ数週間は、ドル高が企業利益見通しを押し下げている。

(David Gaffen記者)

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