春闘は高額回答相次ぐ、中小への波及が焦点に

2015年3月18日(水)17時46分

[東京 18日 ロイター] - 2015年春季労使交渉(春闘)で、主要企業は18日、労働組合の要求に対して一斉に回答した。焦点となった賃金を一律に引き上げるベースアップ(ベア)は、トヨタ自動車が月額4000円(前年2700円)としたほか、パナソニックなど大手電機6社も月額3000円(前年2000円)で決着。安倍政権の賃上げ要請を受け、前年を上回る高水準の回答が相次いだ。

ただ、労働者の7割を占める中小企業は依然として慎重な姿勢を崩しておらず、所得から消費への前向きな循環が強まるかどうかは不透明だ。

<高額回答相次ぐ自動車・電機>

トヨタのベア4000円は現行の要求方式となった2002年以降で最高となった。定期昇給分を含む賃上げ額は1万1300円(3.22%)にのぼり、消費税増税分の3%を上回る。会見した上田達郎常務役員は「通常であればなかなか難しい金額だが、将来の投資。日本経済の好循環、会社の競争力向上のために熟慮熟慮を重ねた結果、こういった回答を出した」と語った。

日産自動車のベアはトヨタを上回る月額5000円(前年3500円)で決着。年間一時金は5.7カ月と満額回答となった。

日立製作所はベア3000円、年間一時金5.72カ月。ベア実施は2年連続で、現行の要求方式となった1998年以降で最高額となる。一時金は要求の5.9カ月には届かなかったが、前年の5.62カ月は上回った。三菱電機の一時金6.03カ月と2008年の5.83カ月を上回り、過去最高となった。

一方、経営再建中のシャープは例外だ。労働組合は電機連合の統一闘争から離脱しベア要求を見送ったが、会社側は定期昇給と賃金体系の維持を回答。夏の賞与は2カ月分から1カ月分に半減する。

シャープは5月めどに策定する新中期経営計画に向けて構造改革案を検討中で、社員の賃金削減は避けられない情勢。2012年の経営危機の際には、2014年3月までの間に、管理職は5―10%、一般社員は2─7%の賃金削減を実施した。今回の危機でも、4月以降の賃金の削減幅が焦点となる。

交渉結果を受けて会見した電機連合の有野正治中央執行委員長は「役割りを一定程度果たせた」としながらも、「組合員の7割を占めるグループ企業や中堅・中小企業にこの結果がどれくらい波及していくかがポイントだ」と述べ、焦点は今後本格化する中小企業の労使交渉に移るとの見方を示した。

<人手不足で流通・外食も動く>

流通や外食企業では、円安や増税後の消費停滞など取り巻く環境は厳しいものの、人手不足もあり、ベアを実施する企業が相次いでいる。

2015年2月期で28期連続で増収増益が見込まれるニトリホールディングスは、12年連続でのベア実施を決めた。ベアは5042円(1.56%)となり、ベアや定期昇給を含む月額賃金改定は3.16%増の平均1万0185円で妥結。一時金は0.38カ月増の5.20カ月。一方、パート・アルバイト社員についても、時給を30.5円(3.35%)引き上げる。パート・アルバイトのベアは2年連続だという。

牛丼「すき家」を運営するゼンショーホールディングスは、定昇1.85%(5700円)、ベア0.65%(2000円)で正社員の月例給は2.50%、7700円引き上げる。

<厳しい状況続く中小企業>

ただ、円安によるコスト増などに苦しむ中小企業が賃上げに踏み切れるかどうかは不透明だ。加盟する組合の8割が従業員300人未満の中小企業で構成されている、ものづくり産業労働組合JAMの眞中行雄会長は、加盟組合の年間一時金の要求がほぼ前年並みにとどまったことなどを踏まえ「中小にはアベノミクスの効果が表れていない」と厳しい見方を示した。

ロイターが17日に公表した企業調査によると、今年の大企業・中堅企業の賃上げは、トヨタなど一部の好収益企業を除き、前年を超える勢いが広がっているとは必ずしも言えない結果となった。前年を上回る賃上げ率を予定しているのは全体の14%で、ベアを予定していないと回答した企業は39%に達した。4月の賃金改定後のベースで、昨年の3%の消費増税前と比較した賃金上昇幅は76%が「2%以下」となり、増税分をカバーできていない。

菅義偉官房長官は18日午後の会見で「政労使会議での決定を受けて、期待通りの対応をいただいている」と評価。その一方で「その(政労使会議の)際に、企業の様々な収益については賃上げはもちろん、下請け企業にもしっかり対応するということを確認した。これから、中小企業関連にそうしたこと(賃上げ)が広がることを大いに期待したい」と注文もつけた。

*内容を追加します。

(志田義寧 白木真紀 清水律子 村井令二)

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