ロイター/INSEADアジア企業景況指数、第1四半期は横ばい

2015年3月18日(水)12時13分

[上海 18日 ロイター] - トムソン・ロイターがINSEADと共同で実施したアジア企業景況調査によると、第1・四半期のアジア主要企業の景況指数 RACSI はほぼ横ばいだった。米国の利上げが一部企業の懸念材料となった。

第1・四半期のロイター/INSEADアジア企業景況指数は71と2014年第4・四半期の72から小幅低下した。50が景況の改善と悪化の分岐点となっている。

国別ではインド企業の指数が97と4四半期連続で域内最高だった。インフレ率の低下と積極的な利下げにより成長を押し上げるとの見方が強まっている。

これに対し、シンガポールの指数が3四半期連続で最も低かった。米連邦準備理事会(FRB)が6月にも利上げに踏み切るとの観測が重しとなった。FRBが利上げすれば国内銀行も追随するとみられ、住宅ローン金利の上昇により不動産市場で需要が弱まる可能性がある。

INSEADのアントニオ・ファタス経済学部教授は「金利の動向について異なる解釈が生じ、金融市場が大きく変動する重大なリスクがある」と指摘した。

中国の景況指数は54と前回調査の50から上昇した。中国人民銀行(中央銀行)は利下げなどの金融緩和措置によって景気の腰折れ回避に努めており、事業見通しに対して明るい見方が強まった。

一方、オーストラリアでは景気指数が85から70へ低下し、国別では最も大きく落ち込んだ。コモディティ(商品)相場の下落が資源輸出国である豪企業の景況感に影を落としている。

調査は3月の第1週から第2週にかけて111社を対象に行われた。回答を寄せた企業の45%が今後の事業見通しは明るいとし、51%は中立とした。見通しが暗いとの回答は4%だった。

<金利上昇と原油相場の下落>

これまで米国の低金利を背景に投機筋などの資金がアジアに流れ込んでいた。しかしFRBが利上げに踏み切れば、投資家はアジアから資金を引き揚げる可能性がある。

不動産ブームで融資が活発化しているシンガポールなどでは国内金利が上昇すれば住宅ローンの返済負担が重くなる。

キャピタル・エコノミクスのシニア・アジア・エコノミスト、ダニエル・マーチン氏は「貸し出しの急激な伸びと金利上昇見通しは非常に心配な組み合わせだ」と指摘した。

ただ原油相場の下落によりエネルギー価格が低下し、米利上げの影響を一部相殺する可能性がある。

マーチン氏は「ガソリンなどエネルギー価格が下落すれば、家計は支出を増やすことができプラス要因だ」と分析した。

ロイターとINSEADの調査では、世界経済をめぐる不透明感が事業見通しの最大の懸念要因に挙げられた。コストの増加や規制政策の変更、競争の激化などがリスクとの指摘も見られた。

<不動産部門が堅調、金融は弱い>

業種別では、不動産部門の景況感指数が第4・四半期から1ポイント上昇し88と最も高かった。小売りが82(前回は83)、医薬品が81(前回は70)でこれに続いた。

金融は55と最も低水準だった。規制当局の方針が不透明なことや金融危機の影響が残っていることなどが圧迫している。ただ過去2四半期の50からは上昇した。

INSEADのファタス教授は「世界のどこでも金融機関はかなり脆弱だ。金融危機、信頼の欠如、事業を非常に複雑にしている規制の強化など複合的な要因だ」と述べた。

*内容を追加します。

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