アングル:需要高まるユーロ圏のインフレ連動債、ECBのQE開始で

2015年3月16日(月)18時44分

[ロンドン 13日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)による1兆ユーロ規模の量的緩和(QE)始動で通貨安競争が加速するなか、この競争で「勝者」となるのはユーロ圏のインフレ連動債かもしれない。

インフレと景気の押し上げを狙ったQEの開始を見込んで、ここ一カ月でインフレ連動債の需要は高まった。この需要の高まりによって、国債利回りと連動債の「実質」利回りの差で、インフレ期待を示すとされる「ブレークイーブンレート」は上昇している。ただ、ECBのインフレ目標である2%近くの水準にはまだ届いていない。

例えば、フランス10年物国債のブレークイーブンレートは約1.37%と、2月初めにつけた約1%から上昇している。

アナリストの多くは、ECBの債券買い入れがユーロを押し下げインフレ率を上昇させる中、連動債への需要はさらに高まるとの見方を示している。

ECBのQE開始以降、ユーロは対ドルでの等価(パリティー)に向けて下落を続けている。昨年5月以来の対ドル下落率は約25%。ECBのQEが加速し米連邦準備理事会(FRB)の利上げが近づくにつれ、ユーロは向こう数カ月で等価を割り込むと多くのアナリストはみている。

ユーロの下落は輸入製品を割高にさせ、一部のアナリストは向こう12─18カ月で物価は0.5─0.7%上昇すると予想している。

大まかな計算では、ユーロの実効為替レートが10%下がればインフレは0.4─0.5%ポイント上昇することになる。ECBがQEを発表した1月22日以来、ユーロの実効為替レートは5.25%下落している。

アクサ・インベストメント・マネジメントでインフレ連動債ファンドを担当するジョナサン・バルトラ氏は「ユーロは向こう一年間の通貨安競争で勝者になることが予想されている。ユーロのインフレ連動債は高い価値がある」と指摘した。

アクサのインフレ連動債ファンドは、昨年の原油安の影響をヘッジするためこれまでは最大15%まで国債を投資対象に含めていたが、今月に入って連動債のみの投資に変更した。

<注目はイタリアとスペイン>

バルトラ氏は、ドイツとフランスのインフレ連動債に比べ、より高い利益をもたらす可能性のあるイタリアとスペインのインフレ連動債への投資を選好すると述べている。同氏はまた、スペイン・イタリアのインフレ連動債は、利回りが過去最低を記録した国債と比較しても魅力的だとしている。

イタリアのインフレ連動債は、3月31日からバークレイズの債券指数「世界物価連動国債(WGILB)」と「ユーロ圏物価連動国債(EGILB)」に採用される予定で、これも需要の押し上げ要因になっている。またバークレイズが最低格付け基準を「A3/A-」から「Baa3/BBB-」に変更したことを受け、スペインも同指数に含まれる見通しだ。

原油価格が安定する中、これまで連動債を購入してこなかった投資家も市場に参入している。

シティのストラテジスト、ジェイミー・サール氏は「ユーロ安がインフレに影響を与え始めると確信しているが、市場はこの可能性を軽視している」と指摘。「われわれが予想した通りユーロは対ドルで等価に近づいており、これは現在続いているとされる通貨安競争によるところが大きい。明確にユーロ安を狙っているわけではないが、ECBが良い仕事をしているというサインだ」と述べた。

(Emelia Sithole-Matarise記者 翻訳:本田ももこ 編集:加藤京子)

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